hyla’s blog

はてなふっかーつ!

阿波の海岸


 天気も良かったので、ちょっと走ってこんな海岸へ来た。見事な礫浜で、大きさのそろった礫だけがずっと向こうまで積み重なっている。ただし、ここは県境を越えて一応徳島。と言っても、東讃の人間にとっては、距離的にも、感覚的にも、まだ地元の領分だけどね。
 
 
 浜に下りると、波で磨かれて丸くなった礫は、結構滑って歩きにくい。礫浜ではあっても、この季節の波は穏やかで、透き通った水の中の礫がずっと先まで見える。この穏やかな波で礫が丸くなるにはどれほどの時間がかかったのだろうと思ったけれど、ここも冬になれば白く波が立つ。この丸い礫を作ったのは、たぶん冬の波だろう。


 
 
 そんなことを考えながら、波打ち際を歩いてみたけれど、掘るのに手頃な大きさの礫はほとんどない。浜の端まで歩いても、拳大の礫しかないので、これではさすがに掘るは無理だ。礫の隙間では小さなカニを見たけれど、礫の隙間にすぐに入り込んでしまって、捕まえられない。たぶん赤っぽいから、アカイソガニだろう。
 そこで、打ちあがった海藻の塊をチェックしてみた。網かごの中に海藻の塊をのせて、軽く振ってみる。すると、海藻に潜り込んでいた生きものが驚くほどたくさん出てきた。小さなハネカクシに、カニに巻貝にハサミムシにハマワラジにフナムシに…。
 

 
 フナムシはこんな感じだから、これはたぶんキタフナムシ。触角が短めだし、尾枝も太短い。環境も自然の礫浜だし、これはキタフナムシで間違いないだろう。礫浜で見るのは、たいていキタフナムシだ。

 
 それから、驚くほどたくさんのトビムシも落ちてきた。鮮やかなオレンジ色のトビムシは、礫浜でちょくちょく見るけど、ここは大量。それにもっと大きな黒いトビムシもたくさんいて、これは太陽光線が当たると虹色に光る。これは前にも採ったことがある、ホソハマトビムシの仲間だろう。

 
 ただし、ホソハマトビムシについて以前に図鑑で調べると、「太平洋岸では伊豆半島まで」とされていて、ではそれより南や瀬戸内海ではどうなっているのか、と不思議に思っていた。そこで、これについて改めて調べてみると、笹子由希夫さんという方の書かれた「日本産ハマトビムシ科端脚類の分布と分子系統解析」という文献が引っ掛かった。三重大学修士論文らしいけど、ネットで自由にアクセスできるのはありがたい。
 これによると、この辺で見られるのはホソハマトビムシ類は、ミナミホソハマトビムシ(Paciforchestia sp.2)らしい。学名にsp.2とあるのは、たぶんまだ正式には記載されていないということだろう。このミナミホソハマトビムシを始め、ハマトビムシもまだ未記載種がたくさんいるとか。ハマトビムシは、海岸の生態系を支える重要な生物だのに、それでもまだ十分に調べられていなかったとは…。
 


 ひとしきり採って、そのまま海岸にそって少し移動すると岩場になった。

 
 山際の湿った崖には、こんなものが生えている。まだ咲いていないけど、分厚い葉の感じからして、これはたぶんアゼトウナ。もう少しすれば、綺麗な黄色い花を咲かせるだろう。

 
 それから、釣りをしている人がたくさんいたから、岩場から海を覗いてみると魚の群れが見えた。ここら辺は、釣りの良いポイントなんだろう。


 そんな岩の表面で、黄色いものが飛んだので、見てみるとこんなものもいた。パッと見は、ハチ。オオフタオビドロバチ…モドキだね。触角は長いけど、根元は1本で途中から二本に分かれているし、それに何より後翅が退化して2枚しかないからこれはハチじゃない。アブだ。とはいえ初めて見たものだから、とりあえず採っておこうかな?と思ったら網がない。でも、これだけ明確なベイツ型擬態なんだから、実際はたぶん刺さない…はず。と思って素手でそっと捕まえたら、意外とあっさり捕まった。
 戻って調べてみたら、これはハチモドキハナアブらしい。この見事な擬態っぷりで有名なようだけど、これについて「樹液に集まる」と書かれているものが多い。でも、私が見たのは、海岸の岩場なんだけど…?しかも、明らかに岩場に固執していて、写真を撮っている間に何度か飛ばれたのだけど、それでも岩場からは離れなかった。なぜ岩場にいたのだろう。海水からミネラルを吸収するといった習性でもあるんだろうか?


 ってことで、面白いものが結構見られて楽しかったけれど、やはり残念なのはここは徳島だってこと。どれだけ良いものを見つけても、香川のデータには、ならないんだよね。次はやっぱり、香川で探そう。