「剣姫」
これを読んだ。
- 作者: クリスティン・カショア,立花オコジョ,Christin Kashore,和爾桃子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/05/20
- メディア: 文庫
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世界幻想文学大賞でなくても、ミソピイク賞に全米図書館賞なら相当期待できるはずだ。発行当初アマゾンでは成人指定になっていて驚いたが、今日本屋で見た本はどう見てもちゃんとしたFTで、手に取ると欲しくなって買ってきた。
で、読み出して、初っぱなからさくさく進む。のっけから地下牢に忍び込んで老人を助け出すってどういうこと?と、興味をそそるシチュエイションだし、描写もまずまずでイメージしやすい。主人公を含め、キャラクターも明確で、それそれでいて等身大の人間らしい悩みなどもよく書き込まれている。
何より、物語の構成がよく練れている。基調にあるのは主人公の二人の成長とラブロマンスなので、予定調和で終わるのだとは早い段階で読めるのだけど、それでも老人がなぜ誘拐されたのか、その背後にあるのは何か。どんどん謎で物語を引っ張っていくので飽きない。かなり引っ張った割には最後があっさりだなとは思うけれど、それでも最近のファンタジーとしてはかなり良くできている物語だろう。
ラブロマンスが予定調和的で、その点は評価は分かれるかもしれない。また、問題となっている「人をたぶらかし自分を信じさせてしまう力=賜」というのは、やや説得力には欠ける力だし、そのような力を持った悪役がなぜその力を悪用するようになったのか。なぜ、動物を殺したり、幼女をいたぶるような趣味を持つに至ったのか、その辺の書き込みはもう少し欲しい。それから、主人公があまりにも強すぎる気がする。が、女性の主人公なので、その女性がどんな男性よりも強く、更にどれほど恋人が好きでも自分は自分でありたいから結婚はできない、と思うあり方は今風で好感が持てる。
と言うことで、大人が鑑賞するするとやや甘いとは思いつつ、一気に読ませる力はあると思う。
ただ、やや古典的な少女漫画風の表紙絵は、全然強そうに見えず甘さを強調するので、もっとイラストっぽい渋い感じの方が良かったのではと思った。
これは、3部作らしいので、1年以内に次作が出版されることを期待したいところだな〜。