はるはきてる
土曜日の午前中はお茶なので、稽古に行っていた。田舎なので、稽古中も静かである。
稽古をしているお茶室の庭で、ヒヨドリが「ピーッ」と鳴いて飛び立つ。
つくばいの水の流れる音がする。
「チーチー」鳴く声に、そっと障子を開けて隙間から覗くと、メジロが庭のツバキの花に集まっていた。
「ねおおおお〜」とネコが鳴くいて、通りすぎだ。
本日のお点前では、お正月の残りのよいお茶を使った。「香雲」と言うお茶で、相当高いようだ。黒楽のお茶碗で煉る。湯は大きな釜に、たぎっていた。三人分九杯のお茶を入れ、お湯を入れて煉る。再度湯を足す。できたお濃い茶をお客に出そうと手に持った時、ふっと良い香りが漂った。さすがだなと思う。そう「香雲」
十分に煉って、もったりと光沢のあるお茶だった。先生は「美味しい」といった。
床にある掛け軸は漢字の一文字「雪」。
床の花は、白梅に胡蝶わびすけ。
水差しは、先生が頑張って出してくれた。青磁でオシドリの絵がついている。これは、表の堀之内宗匠の花王が入っている道具で、お茶席にもつかうものだ。
「道具は、使ってこそ値打ちがあります。私も年をとったらもう出せなくなるかもしれません。だからこうやって使える今が花やね。」
と先生は言う。
お茶を習っていて嫌なことも、いろいろある。何でそこまでいちいち言われなくっちゃなんないわけ!と思う。うちの先生は昔式で、どっちかと言わなくても口やかましい方で、時には稽古仲間で愚痴る。
けど、それでも時に、何も考えずとも、滑らかに動いていく自分の手の動きを見る。なかなか上手くは煉れないお茶が、うまく煉れる時がある。
落ち込んで、何もしたくないときでも無理矢理にお茶には来る。来ないと怒られるので。
で、終わって帰る道は、やけに明るいものです。