hyla’s blog

はてなふっかーつ!

霧の朝だよ


 今朝も起きると霧だった。白く明るく、不思議と静かな朝の気配にたまらなくなって、大急ぎで着替えて海まで散歩してきた。


 霧はかなり深くて、この分では今日も停船勧告が出ているだろう。ゆっくり流れる霧は、細い蜘蛛の糸や伸び始めた柔らかな若葉に、それからちょうど咲き始めたアケビの花にもまとわりついて、雫をつくっている。花の香りを含んだ湿った空気は、吸入器から出てきている蒸気のよう。あるいは、よく調節された温帯温室の空気。
 
 
 
 大学の頃、イギリスへ旅行に行ったことがある。ところが、しばらくイギリスで滞在していると、乾燥した空気で喉をやられてか、声がガラガラになってしまった。そんなときにキュー・ガーデンに行って、温帯や熱帯の温室に入ると、その湿り気にほっとした。深呼吸を何度も繰り返して、花の香りの混ざった湿った空気を吸いながら、日本は蒸し暑くてかなわない時もあるけど、私はやはり水の国の住人なんだなと思った。

 
 河口まで来ると、霧の中に鳥の姿が見えたけど、ヒドリガモの数がずいぶん少ない。まだこの時期なら、100羽以上いても良いのに、どうしてだろう?と思いながら堤防の向こうを見ると、防波堤の工事をするらしく大きなシャベルカーが砂浜に入っていた。この工事のせいかな。既に浜辺は大きく掘られていて、ここにも結構たくさんの種類の細かな生き物がいるのだけど、これでは少なくとも一時的にはいなくなるだろう。昨年採集しておいて良かった。
 ある生き物を見つけても、「また今度採集しよう。」などと思っているうちに、生息地そのものがなくなってしまうことも多い。常に、「今やらなければ、永遠にわからなくなる」と思って、備えておかなければいけないのかもしれない。

 
 浜辺を歩いて、ついでに桜を見て帰ってきた。この辺のソメイヨシノは、もう散り始めている。霧の雫にぬれた桜はきれいだけど、これほど美しい花が一気に咲くのに決して結実することがないのは、悲しいことだ。ソメイヨシノの花が、どこか寂しく見えるのは、そのせいだろうか。

 
 足に任せて、田んぼの中の道をふらふらと歩きながら帰ってくると1時間たっていた。
 霧の中の散歩は楽しいし、こんな天気は大好き。

 
 でも、この天気ではタンポポは開かないので、とても見つけにくい。4月から香川県タンポポ調査の東讃調査員となっているのだけど、タンポポ調査員としては、この時期この天気は痛いなあ。