hyla’s blog

はてなふっかーつ!

悲しい


 勤務先の中庭には、3本ケヤキがある。そのケヤキには、いろいろな生き物が来ていた。ムクツマキシャチホコに、イラガやアオイラガの幼虫。ウンモンスズメの幼虫もいるし、幹にはケアリが蟻道を作っていて、中にはカイガラムシがいた。特にその中でも、ムクツマキシャチホコが割とたくさん発生していて、大きくなったイモムシが地面を歩いていることもしばしば。

 私は、そんなケヤキに来る生き物を毎日眺めるのが好きだった。木の下に立って耳をすませば、イモムシが葉を囓る音がする。そして、ぱらりぱらりと糞が落ちてくる。時には、たくさんいるイモムシを狙って寄生蜂を思われるものも来る。少しずつ成長する彼等を眺めるのは楽しい。



 ところが今日、噴霧器を持った人が来て、殺虫剤を撒いてしまった。私が気がついた時には、既に撒きはじめた後で、大好きなウンモンスズメだけでも少しでも助けられないかと思って何匹か採ってみたけれど、ほとんど殺虫剤がついていないように見える個体も、少し時間がたつと激しく頭を頸をふり、死んで行った。
 消毒が終わった木の下では、大量のイモムシが落ちて苦しんでいる。ウンモンスズメだけでも、20匹以上いたし、ムクツマキシャチホコはもっと多い。それに、産卵直前の大きなお腹をかかえたコカマキリのまでもが、10匹近く死んでいた。


 大多数の人は、「これで、安心」とか、「さっぱりした」と、感じるのだろう。
 けれど、そういう生き物をみて、私は泣きそうだった。
 


 「虫なんて気持ち悪い〜」「毛虫なんて、いや〜。」と感じる人は多いし、そうなると素直そう言って、社会に受け入れられる。けれど少数派の、「イモムシはカワイイ。」と言うヒトは、どうしても「ちょっと変わった人」と見なされる。誰にも共感はしてもらえない。「虫なんて…」と思う人は、少数派として生きる事のきつさに気づく事もないだろうなあ。それって、ちょっと理不尽な気もする。
 けれど、過半数の人が感じる事が正しいのが、世の中だ。ここで、素直に「イモムシが可哀相」などと言えば「非常識」だと言われるだけだ。さすがに今はもうそのことはわかっているし、どうしようもなく虫が嫌いで、怖いヒトがいることもわかっているので、私は何も言わない。私も、この狭い社会で生きていかねばならない。




 けれど、感じる事は変えられない。
 今日、たくさんの生き物が、苦しんで死んでいった。