hyla’s blog

はてなふっかーつ!

少しずつ違う


 ふと見ると、今日は夕方潮が良く引くことに気づいた。そういえば、先日は満月だった。となれば、やはり海に出かけたくなる。

 
 今日行った海岸も、ちょくちょく来ている所だけど、ここも夏になって人が増えてきた。そんな海岸をとぼとぼ歩いていると、ふと足元の砂に1cmほどの穴を発見。見ていると、そこから小さなハチが出入りしている。アカゴシクモバチだろうか?網は持っていなかったし、せっかく穴を掘っている最中に採ってしまうのもなんだか可哀相になって、観察だけした。
 それから、陸に近いところに溜まった細かな砂には、すり鉢状の穴が開いていて、掘るとこんなアリジゴクが出てきた。クロコウスバかな?これも、きちんと固定して同定すれば良いのに、何となく可哀相でできない。この浜には、もう一つ徘徊性のアリジゴクがいて、これも含めいずれはきちんと採集・同定しないとなあ。でも、可哀相だしなあ。
 


 そのまま潮の引いた砂浜で、砂を掬っては網かごに入れ、バットに落ちてくるものを確認しながら少しずつ移動した。更に礫のあるところでは、石をひっくり返して観察し、潮が引いて露出したヒジキの周囲やイワガキの張り付いた岩礁も眺めた。
 そうするうちに、ふと少し先の島が目に入った。あれ?島の前に道ができていないか?大潮だから、歩いて渡れるようになってる?慌てて礫の中を歩いて島の前へ来てみれば、やはり完全に潮が引いて、歩けるようになっている。
 渡った島では、ここでも砂の中から小さなハネカクシを採った。それに、潮の引いた岩の上では、クロオオアリが盛んに歩いていて、多分この島に巣があるのだろう。けれど、イソギンチャクの隣をクロオオアリが歩いて行くのは、なんだか不思議な光景だった。そういえば先日某所で、熱帯のアリが泳げるかどうかを試した論文が紹介されていたけれど、クロオオアリや海岸でよく見るアミメアリなどは泳げるのだろうか?
 


 家に帰って採った物を見てみた。今回一番たくさん入ったのは、この下側に写っているハネカクシ。これはすごく体が薄くて、あっという間に乾いて体が丸まってしまう。名前が無いのは不便だし、とりあえず薄っぺらだからペラペラハネカクシとでも呼んでやろうか。
 このペラペラハネカクシは3月にも採れたけど、その後は一気に数が減りそのまま居なくなるのかと思えば、今回は嫌になるほど採れた。あまりにもたくさん採れすぎて、仕舞いの頃にはもうそのまま砂と一緒に逃がしていたほどだ。そのペラペラハネカクシとほとんど同じ大きさで、私には肉眼で区別がつかないのが、上のハネカクシ。これは、この時期に成虫になるものらしく、羽化してまだ体が固まっていないようなものもたくさんいた。
 


 それから、下のハネカクシは、砂の中や石の下から採ったものだけど、ナギサハネカクシの仲間かな?でもこれって、微妙に大きさやシルエットが違うけれど、全部別種なんだろうか?
 一番大きなものは、石の下にいるもので、これも幼虫と思しき白い個体をたくさん見た。一番小さな細いものは砂の中に居たものだけど、これはちょうど繁殖期らしく、バットの中で交尾を始めたものもあった。この2つは明らかに別種だけど、その他はどうなんだろう。
 



 私は、昆虫の専門家ではないし、膨大な種数を誇るハネカクシなんてわかろうはずもない。それなのに、どうして訳のわからない小さな生き物を、ひたすら採っているんだろう?と自分でも不思議になるときがある。
 それは多分、こうやって採ってみれば、季節によって増えたり減ったり、新成虫が出てきたり、交尾し始めたり。そして、同じ海岸でも、場所によって微妙に棲み分けていると言うことを知るのが、割と楽しいからだろう。住む場所と、体の薄さや触角の長さ、飛ぶ羽の有る無し。そういうものが見事に良く合っていて、それを見れば、小さな生き物でも、やはりその場所に適応したものだけが生き残り、進化してきたことを実感する。名前や分類がわかればもっと楽しいに違いないけれど、それがわからなくともなるほどと思う事はたくさんある。
 

 それに何より、こうやって採っておけば、いつかはこれらの正体が判明し、これら分布のところに「四国」または「香川」と書いてもらえるだろう、なんて下心もあるんだな。

 と言う事で、明日も潮は良い。明日はどこへ行こうか…。