「図書室の魔法」
これを読んだ。
- 作者: ジョー・ウォルトン,松尾たいこ,茂木健
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2014/04/27
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (25件) を見る
- 作者: ジョー・ウォルトン,松尾たいこ,茂木健
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2014/04/27
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (24件) を見る
ヒューゴー賞とネビュラ賞と、英国幻想文学大賞を受賞しているなら、そりゃ買わなければいけないでしょ。本の好きな女の子の話で、「図書室の魔法」というなら、エンデの「果てしない物語」みたいな話かな?と思いながら読み始めた。
物語は、読書好きな主人公モリの日記として進んでいく。モリは双子の妹と共に母親と一緒に暮らしていたのだけど、その母親はどうやら精神的におかしくなってしまったらしい。それが原因で、妹は事故死し、モリ自身も事故で杖をつく状態となり、離婚して離れて暮らしていた父親に引き取られる。そして、その父親のもとで、寄宿舎のある学校へ行くことになり…。
という話で、とにかく淡々と書かれた日記には、毎日のように読んだ本の事が出てくる。物語の時代は80年代なのだけど、まあそのタイトルが「タイタンの妖女」とか「バベル17」とか、「アンバーの九王子」とか、「デューン砂の惑星」とか、まあ懐かしい懐かしい。贅沢なまでに面白いSFのあふれていたあの時代を、彼女は生きていて、猛烈な勢いで読み進めていくのだ。もうそれだけで、こうしたタイトルを読んできた大人は、胸熱。
で、それだけでは単なる小説。ヒューゴーにネビュラなんてSF有名賞を受賞しているし、これはファンタジーだね。ただし、わかりやすい剣と魔法の世界ではない。
モリの魔法は、例えば味方が欲しいと思って呪文を唱えると、読書会に誘われるといった形で発揮される。また、彼女の目には妖精が見え、時にはその言葉も聞こえるらしい。そして、母親も同様に呪いを送ってくるし、それをまた呪文ではねのけようとする。ファンタジーらしいところはそれだけで、後は普通に80年代のやや孤独な少女の日記だ。
だから、逆にこの本を読んでいると、どこまでが本当で、どこまでがウソなのか?と思い始めてしまう。
モリは本当に妖精が見えて、魔法が使えるのか?
それとも、そう思いたくて、日記にあったらいいなと思う事を書いているのか。
それとも、有りもしないことを有ると、本当にそう思い込んでいるちょっといイタイ子なのか。
モリについて第三者から見た記述はないだけに、その判断がつかない。そうやって、どこまで本当?と考え始め、そもそもこれって、小説だと気づかされる。その辺の微妙な感じが上手いね。
そして、モリは家庭的には恵まれないし、学校の友達からは浮いているけれど、本を通じて読書会に誘われ、そこで、ティプトリーやゼラズニイについて議論できるのが、羨ましい。私はティプトリーもゼラズニイもすごく好きだけど、そう口に出せる場所なんてなかったぞ。「良いよねえ。」と一緒に言える、あるいは議論できる人が居る環境は、とても羨ましい。そして、面白い本が無限と思えるほどにどんどん出版されたあの時代は、それ自体今考えると夢の時代だった。そういう時代に、SFに囲まれて、SFを読みまくって成長していくってのは、SF読みにとって、まさに夢の子供時代。SF大好きな作家が、そういう夢を描いた作品とも言えるだろう。
私は、モリほどは読んでないけれど、それでも出てくる作品の半分以上は読んだかな。もうほとんど忘れてしまった作品も多いけれど、夢中になってむさぼるように読んだあの本達が、私の基本を作ってくれたという気はする。
本の帯には「15歳、読書が大好きひとりぼっちの少女」「大好きな小説を夢中で読んだあのころ」とある。確かにそういう本だ。そういう頃を思い出して、しみじみしてしまう。
そして、出版社の思うつぼなのだけど、またそれらの本を読みたくなってしまうじゃないか!
とくにゼラズニイを読みたい!高校の頃に大好きだったアンバーシリーズ読みたい!
なのに、絶版…orz。
ハヤカワ〜!ぜひぜひ、復刊を〜!