テン
いつものように車で出勤していたとき、路上に何か動物が落ちているのが見えてきた。哺乳類拾いについては、鍛え上げられている。だから私の頭は、見た瞬間から自動的に同定を始めてしまう。
大きさは猫大。タヌキやアナグマではない。ハクビシンでも無さそう。
細長いかな?と言う事は、イタチ系?にしては、大きいし…。
と思いながら、近くを通ると、茶色の中に明るい黄色が見えた。
ああああああああっっ!
テンだ。テンだ。あれはテンの色合いだあ!
テンとなれば、これは珍しい。テンはこれまでに1度しか拾っていない。個体数はそこそこいるのだと思うけれど、イタチなんかと違って主に山で活動する動物だから、交通事故はものすごく珍しいのだ。
どうする?
拾う?放置する?
時間はある?
拾うものはある?
とわずかの間に考えつつ、気がつけば足はブレーキを踏み、Uターン。手頃な場所に車を止め、車内にあったビニール袋を持って走っていた。
そして、急いで袋に入れて、車を走らせながら、考えた。さてどうしよう?
テンは、ものすごく珍しい。イタチとかテンは、とても剥きやすいし、仮剥製とかも作りやすい動物だ。頭骨にしても、典型的イタチ科の頭骨が採れるだろう。それに何より、普通の人はテンとかを間近に見たことはない。けれど、今の職場ではこの処理をする場所がない。
どうする、どうする?
と言うことで、いくつかのやりとりの後、テンはこれまた大阪へ行くことになった。
標本が残せないのは残念だけど、拾っておけば採集データは残るよね。