hyla’s blog

はてなふっかーつ!

標本


 転勤することになって、標本の処理に差し迫られた。

 とりあえず冷凍庫の中に眠るアナグマやタヌキ、それにたくさんの鳥たちは、ホネが大好きで有名な某自然史博物館で引き取ってもらえた。リンゴ用の発泡スチロールの箱で2箱分。何ともまあ、ため込んだものよ。
 
 それから、80年代のチョウや蛾の標本もあったのだけど、普通種ばかりだし、自分の作ったものだし、だいぶ状態が悪くなってしまっていて、これは諦めて全て廃棄した。なめしたタヌキやイタチやテンの皮も、ハクビシンの剥製も、データはあったけれど、劣化してたしで捨てた。
 
 けれど、10年くらい前に若者にもらった大きなヒラタクワガタは、外来の血が入ったものらしく、多分外来クワガタが野外に拡散し始めた頃の証拠になるだろう。それから、迷い込んできて標本にしたオオホシオナガバチなどは記録としてとっておきたくなって、持ち帰ってしまった。置いておけば、必ず年度末に捨てられてしまうものだ。
 それから、自分で作った鳥の仮剥製も、全部持ち帰った。カワラヒワシロハラツグミキジバトがおおいけれど、アオバトやヒクイナ、フクロウなどもある。全て、衝突死したものばかり。アナグマハクビシン、タヌキなどの頭骨や、鳥の羽のファイルなども持ち帰って来た。
 ただし、我が家も決して広いわけではない。これらをきちんと保管し続けることは、いずれできなくなるだろう。その時、これらの行き先は香川にはないのだ。だから、いつかは諦めて、自分の手で捨てなければならないだろう。

 
 標本は、そこにその生物がいたという、何よりの証拠だし、その生き物の有り様を伝えるものだ。アナグマとタヌキとハクビシンの違いは、実物を見ればわかる。それに何より、これらはごく普通に身近に生息しているものなのだけど、割とそのことを知らない人が多いし、それがどんな生き物かはもっと知らない。だから、見て欲しい、知って欲しいと思って、私は事故死した哺乳類や鳥を拾っては剥製にし、頭骨標本をつくった。けれど、博物館がない以上、場所に恵まれなければ、続けられない。むしろ、今の職場で、これまでそんなものを置かせてもらえたと言う事の方が、幸運だったのだろう。


 香川に博物館がない以上、標本はどれだけ貴重なものでも、個人の力が及ばなくなった時点で、ゴミとなる。失われて行く。ここにいた生き物の証拠を、標本として残しておけないならば、残せるのはデータしかない。そして、そのデータは、ブログとかではなく雑誌に投稿しておかねば残らない。標本を集めることだけに対し、それをきちんと同定し、何らかの形にまとめて投稿し受理してもらう、その手間暇は…ぶっちゃけ、ものすごく面倒。
 けれど、ここに多様な生き物がいたと言うことを、その複雑で精緻な生き物の世界の記録を未来に伝える為には、これまでできてないその面倒を、克服せねばならないのかなと思ったりする。誰か書いてくれる人がいれば良いけど、他に居そうにもないしなあ…。



 あああああああ…、でも、できるのか。そこまで、気力が続くのか?
 それに、鳥とか哺乳類は種数が限られるから良いけど、昆虫類の同定なんて…(T_T)。