hyla’s blog

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「炎と茨の王女」


 これを読んでみた。

炎と茨の王女 (創元推理文庫)

炎と茨の王女 (創元推理文庫)

 表紙はあんまり好みではなかったのだけど、本屋でぱらぱらとめくってみて、読めそうだったので買ってみた。帰ってきて、読み始めたら一気に読めた。割と面白い。
 

 100年に一度、神から選ばれた証であるゴッド・ストーン(宝石)をヘソに持つ、おデブなオロバジェ国の第二王女エリサは、砂漠の国ホヤ・ド・アレナの王アレハンドロに嫁ぐことになった。夫はイケメンでやさしいけれど、優柔不断で、実は愛人もいるらしい。しかも、結婚したのに、王はそれをすぐに公にする気がないらしい。そんなある日、王女は誘拐されて砂漠に…。その目的は…


 って、感じで、良くある選ばれし者なのに、ダメダメだった女の子の成長譚。ただ、ダメダメという割りには、そもそも頭は切れるし、父親にもコンプレックスから近寄りがたい姉にも愛されているし、乳母や侍女からは誰よりも大切にされている。王女として振る舞うすべも身につけているし、成長と言っても、そもそもかなり優秀な子だね。ストレスがあるとすぐにヤケ食いに走って、おデブとは言え…。
 初めてあった結婚相手の王は頼りない上にそもそも愛人がいるのだけれど、他に結構良い感じになっていく男性もそれなりにいるわけで、人から信頼されるすべも心得ている。なので、成長と言ってもなあ…とかは思う。つか、十代で結婚して、すぐに自分よりずっと年上の大人からも尊敬されるって、ちょっとやり過ぎな感はある。でもまあ、そこは突っ込んではいけない所なのだろう。

 
 訳は、読みやすい。ヒロインはどん底にあってもめげない王女様なので、お話のトーンは明るくて、読みやすい。ただ、その分残るものも少ないのは事実。物語に入り込み、そのシーンを想像して思わず涙するような、そんな感じはあんまりない。その辺では、好き嫌いが分かれるだろう。
 

 それと、この王女様は、100年に一人神様から選ばれた少女で、その証拠におへそに宝石がはまっている。で、何かというと、その宝石=神様に祈る。するとゴッド・ストーンからの温もりや冷たさで、危険や安全がわかることになっている。その神様というものがどんなものか、その意図とかは、少なくともこの作品だけでは今ひとつよくわからなかった。
 これは3部作と言う事なので、続きを読めばその辺も説明されるのかもしれない。



 あと、つまらないことだけど、本の帯の「パオロ・バチガルピ激賞の」という煽り文句は気になった。これは、あまりにマニアックすぎる煽りでしょう。
 パオロ・バチガルピといえば、「ねじまき少女」でヒューゴー・ネビュラ・ローカスのSF三賞を受賞しているけれど、これは純然たるファンタジーだ。SFを読む人ならパオロ・バチガルピは結構知っているだろうけど、ファンタジーを読む人達のうち、どのくらいが知ってるのかな…?