hyla’s blog

はてなふっかーつ!

掘ってみた


 とあるヒトから、海岸の昆虫類は、掘って採集すればもっとレアなものがいろいろ採集できると聞いた。というか、けしかけられた。これまでさんざん昆虫類を採ったけれど、全て海藻や石の下にいたものだけを採っていて、掘ってはいない。でもなあ、「30cmくらい掘る」なんて、か弱い乙女には無理だわ〜。
 
 ・・・・・。

 ごめんなさい。ごめんなさい。嘘です。見栄を張りました。か弱く有りません。世間にもまれて、図太く、したたかになりながら生き抜いてきた大人です。



 と言う事で、スコップとトレイを持って、いつもの海岸へ出かけてみた。

 この海岸は、車から少し歩くし、最後の部分はこんな感じに急な斜面をロープで下りる。それだけに海岸としては良い海岸なのだけど、スコップをもって下りるのは、結構大変。
 

 
 それでも注意しながら荷物を持って、何とか浜辺に下りた。で、どこを掘れば良いのだろう?浜辺といっても結構広いし、いろんな環境がある。波打ち際。漂着物のあるところ。崖の側。真水が流れ込むところ。砂の大きさも様々だし、どこをどれだけ掘れば良いのでありましょう?


 で、とりあえず潮の引いた砂の部分を掘ってみたのだけど、何もいない。まあ、そんなもんだ。
 そこで、こんなところに移動した。細い谷があって、雨が降ると真水の流れ込むところだ。ハマダンゴムシなんかでは、越冬期には崖にちかいところに移動する。なら、昆虫類も同じかもしれない。
 

 
そして、掘り始めて思わず「ええええええーっ」と、叫んだね。というのも、こういうものが大量に出現したから。

 

 で、でかい。ハマトビムシの仲間だろうけど、大きすぎだろう。どう見ても1cm以上、体をのばせば2cm近くある。普通のハマトビムシは白っぽいけれど、これは青黒くて、光の当たり方によっては虹色に光る。これが、漂着物と石の間に大量に隠れていたのだ。なんだよ、これ?
 と言うことで、調べてみたらこれはどうやら、ホソハマトビムシというものらしい。ただし、webでも「土壌生物図鑑」で見ても、分布は「北海道、本州、四国、九州」とある一方で、「日本海側では広く分布しているが、太平洋側では、伊豆半島以北に分布」とか書いていたりする。
 ねえ、瀬戸内海は?香川県は?「太平洋側では伊豆半島以北」なのに、四国は分布?これは太平洋側にはいなくて、瀬戸内海にはいるってこと?

 まあ多分、報告の有無は別として、きっと瀬戸内海にも幅広く居るのだろう。雰囲気から察するに、海岸から森林が続くようなところで、その境界で生息していると見た。ただし、そういう環境は今はもうたくさんは無いだろうし、調査も進んでいないのだろう。更にこの手の分類群の調査をするヒトは少ないだろうから、知られていないだけだろう。


 同じ場所ではこれも見た。

 夏の時期には素早すぎて、到底捕まえる気になれない、フナムシ。さすがにこの時期は、動きがゆっくりなので捕まえてみた。大きさは3cmくらいの個体だったけど、こうやって見てみると、触角が短めで、尾が短い。と言う事は、多分これはフナムシではなくキタフナムシだろう。キタフナムシは、大阪湾でも確認されているらしいし、徳島県の鳴門での生息を報告する文献もあった。鳴門にいて、ここに居ないわけがない。多分、香川県でも、自然状態が残る礫浜を中心に、かなり生息しているだろう。


 
 そんな事を考えながら、石ころの下で越冬中のハマダンゴムシやハマトビムシをたっぷり観察した。つうか、昆虫類は見ませんでした!まあ、一度くらいで、何かが採れるとも思わなかったけどね。


 へろへろになって、スコップを持って退却しているとき、漂着物の中にこんなものも発見した。
 

 これは、海生哺乳類の頭骨の一部だね。頭骨の顔面部分、鼻から額にかけての部分だろう。大きさからして、多分スナメリ。この春死んでいたスナメリのものか、別のものかは知らないけど、長く突き出た鼻の部分の形状から見て、海生哺乳類であることは多分間違いない。なら、これだって大事なデータ、貴重な標本だと思うけど、私個人では収集・保管は困難。無理です。だから、そのまま、浜辺において帰ってきた。
 

 香川県に、地域の標本採集に取り組む博物館が1つもない、と言う事が、無念なり。