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「人は食べられて進化した」


 久々に、自然科学系の読み物を読んでみた。

ヒトは食べられて進化した

ヒトは食べられて進化した


 人は、狩猟採集を行う生物として、多くの動物を狩って進化してきたというイメージがあるけれど、むしろ多くの肉食動物に狩られる存在だった。その「狩られる」生物であった事が、人を進化させる原動力として強く働いている。という内容。なぜ、「狩る人」のイメージが流布したのか。人が「狩られる」存在であったという根拠はどこにあったのか、を古代人類の骨に残る食痕や、現在の類人猿研究から丁寧に述べている。
 

 これによると、初期の人類はライオンやトラやクマ、ニシキヘビや大型のタカ類まで、多くの捕食から獲物として狙われる脆弱な動物だった。だからこそ、捕食されないように大型化し、二足歩行し、群れて社会を作り、音声により捕食者の危険を共有する行動、すなわち言葉が生まれた。また、捕食者の行動を推測するなどの事が大脳の発達を生んだ。「狩る」側より「狩られる」側の方が、生き延びる為に進化しやすい。ヒトは、多くの肉食獣から「狩られる」生物であったからこそ進化したのだ、という指摘はなるほど一理あるなと思った。
 

 ただし、著者は人で進化した行動や形態が全て捕食者防衛として進化したとは述べてはいない。進化を促す要因は1つ以上あってしかるべきだけど、その中で捕食者防衛も重要な要因の一つであっただろうと述べている。こうした物言いは、好感が持てる。複雑に絡み合う生物世界の変化の要因、しかも再現できない進化の要因を明らかにすることは困難きわまりない。そのことを十分踏まえて、自らの説の根拠を説明しているので、受け入れ易い。
 


 最近は、捕食者が被食者に与える様々な影響、生態系における捕食者の重要性について見直されてきているので、そういう視点でも被食者としてのヒトというのは興味深かった。