hyla’s blog

はてなふっかーつ!

アリジゴク

 夕方、一通り仕事を終えて、あんまり疲れた気分だったので、デジカメを持って庭に出た。確か前庭にキノコが見えていたはずだ。毎年ここに生える、イグチだ。
 

 
 今年は、あまりにも暑く乾いた夏が続いた後、いきなり雨が続いた。8月の終わりからほぼ一週間降り続き、今日ようやくお日様をちゃんと見た気がする。すると、至る所にキノコが生えだしている。
 特に前庭に植えられているアカマツの根本には、毎年マツと共生関係にあるヌメリイグチがたくさん生える。忙しくてマメにチェックしていたわけではないけど、今朝見ると茶色い傘が見えていたのだ。実際茂みに入って確認してみると、かなりたくさんのイグチが生えていた。少なくとも3日前には、キノコは見えなかったのに、キノコの成長速度は恐ろしく速い。もう2.3日すると、もっと大きくはなるけれど、傘はふにゃふにゃになるし、虫が入ってしまう。だから、硬くて綺麗な今日生えたものだけを2.3本採ってみた。


 それから、アラカシのドングリを見に行った。中庭には大きなアラカシがあって、毎年大量のドングリを実らせるのだ。アラカシの下に落ちている未熟なドングリを何となくみているとき、ふとこんなものに気づいた。


 クロオオアリの女王アリだ。どうやら巣から出てきたばかりらしく、まだハネもついている女王が巣の近くに3匹ほどいる。でも、なんで今頃女王アリがこんなところにいるんだろう?
 クロオオアリの女王の婚姻飛行は、初夏の温度が急上昇した頃だ。雨の後の蒸し暑い晴れた日に一斉に飛び立って、交尾を行う。今日も、長雨の後の晴れだけど、それで新女王が勘違いしたんだろうか?
 女王アリは、巣の近くで時折動くものの、じっとしている。巣の中からは、ワーカーが砂粒を運び出しては、また戻っていくけれど、女王には巣に戻る気配は感じられない。むしろ、巣の周りで働くワーカーと会うと、ワーカーに軽く攻撃されている。と言う事は、巣立つことで匂いが変わり、コロニーの成員とは見なされなくなってしまったのだろうか?
 
 そこで、ちょっと意地悪?とも思ったけれど、強引に女王アリのうちの1匹を巣穴に追い込んでみた。逃げ道をふさいで巣穴に導くと、女王は頭から巣穴に入っていったけど、すぐに大慌てで巣穴から飛び出してきた。更に、それを追うように大型ワーカーが出てきて、互いに攻撃しあっている。やっぱり、ダメなようだ。殺し合ってしまうのは可哀想なので、そっと指で押さえて2匹を分離させておいた。


 
 それから、また巣穴の状況を見ていると、巣穴から20cmほど離れたところで1匹の小型ワーカーが倒れていた。生きていて、しきりにもがいて動こうとするのに、体半分を何かに固定されて動けないように見える。
 
 なぜ、動けない? …。
 ひょっとしてアリジゴク?地面に中に、アリジゴクが居るんじゃないかしら?きっとそれに脚をとられているんだろう。


 思いついた途端、もうわくわく。不注意でつぶしてしまったりしないように、注意深く地面を掘ってみた。

 

 そして、でたよーーーーーーーーっ!これ!これっ。
 

 
 これは、初めて見たアリジゴクだ。色がかなり黒っぽくて、表面の毛も多い。それから、目が突き出ている。これは何だろう?ただのウスバカゲロウではなく、クロコウスバカゲロウでもなく、コカスリウスバカゲロウでもない。地面を見てもこれが居ることは全くわからなかったので、非営巣性のアリジゴクであることは確かだけど、何だろう。
それにしても、砂やシルトでなく、赤土の硬い地面の中に潜って隠れているアリジゴクがいるなんて知らなかったなあ。


 持ち帰って、実体顕微鏡で見てみたけれど、表面にはたくさんの小さな砂がついて、表面の構造や色合いが今ひとつわからない。頭部の裏側を見ようとひっくり返すと、くるりと起き上がって逃げて行く。これでは同定しようにも難しい。きちんと観察するには、液浸標本にでもしないと無理。でも、殺すのは可哀想だ。
 ならば、これを育てて成虫にすれば正体が判明するだろうか?もう1cmくらいになっているので、終齢に近いだろうし、餌はクロオオアリを食べると言うこともわかっている。


 飼うべきか、標本にするべきか。
 それが問題…。




 でもともかく、初めてのものが見られたってことだけで、嬉しいね。