hyla’s blog

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「狐笛のかなた」


 続いてこれも読破。

狐笛のかなた (新潮文庫)

狐笛のかなた (新潮文庫)

 「精霊の守り人」のシリーズで有名な上橋菜穂子さんの本。なので、児童書ファンタジー

 といっても、実は「守り人」シリーズは読んだことはない。もうずいぶん大人になった頃に出版されたので。ただよく売れているらしいし、それならこれもいけるかしら?と読んでみた。そして、とても読みやすくて一気に読破。


 恐らく中世から戦国あたりの架空の日本が舞台。「あわい」と呼ばれるこの世と神の世の境に産まれた霊狐なのに、人に囚われて使い魔として生きる「野火」という狐と、人の心の声を聞き「あわい」へも立ち入れる不思議な力を持った「小夜」のお話。舞台となる2つの国の間の諍いの中で、2人は引かれあい、そして傷ついた野火を救うために小夜は自分の命を野火に分け与え、自らも霊狐へを変化していく。


 何とも、美しいお話。


 常に小夜を見守り、いざという時にさっと駆けつける野火の存在は少女の夢だし、その野火を守る強さも憧れでしょうね。だから、少し切ないながらもとても気持ち良い。大人としては、本当にどろどろした人の、自分の汚さや愚かしさを既に嫌と言うほど知っているので、気持ち良いけれど、さすがにのめり込みはしない。けれど、本来の対象年齢であろう中高生ならきっと、はまりこみ耽溺することだろう。
 
 綺麗なのは物語だけでしかないのが現実だけど、ただあの年代ならの潔癖さを持って、真っ直ぐに自分を理解してくれる人を夢見て、小夜のように、野火のように、真っ直ぐに生きたいと思うことは、それは悪い事じゃない。
 そうやって、危険な年代をやりすごさせてくれるのが、ファンタジーってものだと思う。



 と言う事で、そのうち時間があれば、「守り人」シリーズも読破してみよう。



 それにしても、萩原規子とか、上橋菜穂子とか、きちんとした日本語の、日本を舞台にしたファンタジーを書ける人達が増えてきたのは、嬉しい限りだね。