「ジェノサイド」
図書館にこれがあったので、借りてみた。
- 作者: 高野和明
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/03/30
- メディア: 単行本
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いくつか賞も取っていると言うことで、読むのを楽しみにしていたのだけど、一気に読んで何だかな〜と考え込んでしまった。
一気に読ませる力はある。けれど、何となくいろんな所が腑に落ちないし、あんまりおもしろさを感じないのだな。
帯には「父の意志を継く大学院生と、一人息子の為に戦い続ける傭兵。交わるはずのない二人の人生が交錯するとき、驚愕の事実が明らかになる。それは、アメリカの情報機関が察知した、人類絶滅の危機…」という文言があって、「世界水準の超弩級エンタメ小説」なんだとか。
けれど、密かな新人類の誕生なんて、「驚愕の事実」ってほどでもないでしょう。SFでは、とてもありがちな話。古くは「スラン」だとか「人間以上」、あるいは「ダーウィンの使者」でもそうだし、いくらでもそんな話はある。それらの作品に比べると、新人類の新しさ・異質性についての書き込みが今ひとつだし、なぜ新人類が出現しなければならなかったのか、その必然性がよくわからない。そもそも、たった一人の男性に生じた変異から産まれた二人の子供だけで新人類になり得るのかな〜。兄弟ではない、一定数以上の人数が生じないと無理じゃない?
少なくとも新人類が生じる必然性とその異質性についての物語なら、「ダーウィンの使者」の方がよっぽど面白い。
それに日本の主人公である古賀研人は、なぜ肺胞上皮細胞硬化症を研究することになるんだろう。傭兵イエーガーに新人類であるアキリを助けさせるため、肺胞上皮細胞硬化症を患う子供の治療薬づくりを行わせるって筋書きだけど、なんでその病気なの?別に他の何の病気でも良かったんじゃない?同じ病気を患う日本の女の子を救うエピソードも、何だか必然性がないなあ。新人類であるエマが実は病気で…とかの設定でもあれば納得出来るけど…。
そもそもタイトルは「ジェノサイド」で、それからすると現生人類の残虐さを描きたかったのか?なら、そんな愚かな人類は新人類によって絶滅させられてしかるべきという発想をもっと突き詰めて、もっと積極的に人類を絶滅させる所まで話を進めないと中途半端だ。
と言う事で、SF的な設定ではあるものの、何だかB級映画の筋書きのようだった。
ので、B級映画のように、退屈な時の時間つぶしくらいにはなります。