ダニ・マニア
こんな本をみつけた。
- 作者: 島野智之
- 出版社/メーカー: 八坂書房
- 発売日: 2012/12
- メディア: 単行本
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ダニがテーマとは、これまたマニアックな…。と思いつつ、ぱらぱらと本屋で立ち読みしていて思わず吹いた。
著者は、宮城教育大の先生だけど、ダニ(主にササラダニ)を研究している事をなかなかカミングアウトできない。ダニの話を女子学生にすると嫌な顔をされて、「…そんなダニを研究している友達もいるんだけどね。」とか、言ってしまったりする。けれど、「やっぱりダニが好き」と、カミングアウトして、以下のようにダニについての愛を語っている。
森に入ると足下には、ほぼ無限大の個体数の彼等が生きているのに、誰も知らないところがいい。その数1平方メートルに2万から10万個体。それなのに、私だけが彼等の存在を感じ、その美しさやかっこよさを知っているところが何とも心地よい。
これは…熱い!これは多足類読本―ムカデやヤスデの生物学の人と同じ、マニアな愛を感じますね〜。
本では、チーズダニやダニグッズ、巨大ダニの話から、ダニとは何かを語る。そして、ダニの分類学的位置から、ダニについてのあれこれ、特に著者の専門とするササラダニの生態について丁寧に述べている。
個人的には、ダニの生殖や警報フェロモンについての話、コケムシがダニを食べる話。それから、ヤドクガエルが毒はアリではなく、ダニに由来しているという発見なんかが興味深かった。
ダニってどこにでもいるけれど、その生態については、なかなか載っている本はない。だから、この本は貴重だ。
それから、ダニマニアな人についての話も楽しかった。
ダニといえば、そりゃ今はホソカタムシの専門家にもなってしまった青木淳一先生が第一人者。その青木先生は数々のダニを記載されているけれど、その和名がヒョウタンイカダニとかフリソデダニ、ドビンダニ、モンツキダニ、マイコダニ。そして、何よりスベスベマンジュウダニって…。「スベスベマンジュウガニへの親しみを込めて青木先生が名付けた」、というけれど、絶対洒落だよね。さすがだ!青木先生って楽しいなあ。
これを読んでいると、著者や青木先生は、きっと育ちの良いユーモア溢れる人柄なんだろうなあと思う。ダニの研究者が、こういうタイプの人の集まりなら、それはきっと楽しい世界だろう。
「「明るく、楽しく、前向きに!」というのが、ダニ研究をするダニマニアの合い言葉」というのも、よくわかる気がした。
ちなみに、この本を手に取ったのは、ちょくちょくFITに入っていたこのダニの正体が知りたかったから。
で、ちゃんとこのダニも紹介されていて、これはウズタカダニというのだそうだ。脱皮のたびに古い殻がそのまま上に乗っかっていってこんな奇妙な形になるとか。何と著者は、このウズタカダニの銀のブローチをつくってもらって青木先生にプレゼントしたというから、さすがだ。
この他にも、FITではいろんなダニが入った。それから、アリを飼育していると、しばしばダニが繁殖して困った。たくさんのダニに乗っかられていながら、あれほど強い顎をもつのにアリはダニを殺せない。それは何故なのかとても不思議。それから、アリの巣にわいたダニは、アリの為に入れた蜂蜜によく集まる。それは何故なのか。ダニについての疑問は尽きない。
だから、楽しい文章だし、これからもダニについての本を書いて、是非もっともっといろんな事を教えて欲しいなあ。
と言う事で、とても楽しい本でした。
付録には、ダニについてより知りたくなった人向けに、ダニの本の紹介、それから、「マニアックなササラダニの観察法(上級編)ササラダニの三枚おろしをマスターしよう!」も、分類体系も載ってます。
ちなみに、基礎編と中級編は、北海道大学博物館のパラタクソノミスト養成講座の講習の資料としてここhttp://www.acarology-japan.org/wp-content/uploads/2011/06/soil_mites.pdfにあるので、ダウンロードできます。(いいなあ、どの講座もすごく行きたいけど、北海道は遠すぎる。)
ここまで書いてて価格は1900円とお買い得。これは、買って損はない!
マニアックな生き物がお好きな方は、是非どうぞ。