hyla’s blog

はてなふっかーつ!

約束の方舟


 本屋で適当に買ってみた。

約束の方舟 (上) (ハヤカワ文庫JA)

約束の方舟 (上) (ハヤカワ文庫JA)

約束の方舟 (下) (ハヤカワ文庫JA)

約束の方舟 (下) (ハヤカワ文庫JA)


 で、読んでいって、それなりに最後まで読めた。


 100年をかけて惑星移民に向かう宇宙船内で、事故が起こり、ベガーと呼ばれるゼリー状生命体が人を食い荒らす。しかし、そのベガーと意思疎通をはかる方法をみつけ、更にベガーと共生を始めた子供達が主人公となった時代。移民する惑星も目前に迫るなかで生じるハプニングと、その中で明らかになるベガーの秘密ってお話。


 まあ、惑星移民船で事故があって…、という設定自体はごくありふれた設定。ベガーの扱いをどのように処理するのかと思ったら、ファーストコンタクトの方向に持って行ったし、一応風呂敷は畳まれているし、SF的定型は全うしているかな?それと、恐らく想定読者である若者とそれほど変わらない年代の子供が主人公だから、これって特にSF慣れしていない若い読者にとっては、なじみやすさがあるのではないかと思う。文体は新井素子というか、今時のラノベの文体?



 だけど、想定読者ではない大人の目から見ると、何となく腑に落ちない所は多々ある。


 
 例えば、タカマガハラって、100年くらいで移動できる惑星らしいけど、そこに向けて宇宙船はどのくらいの速度で移動している訳?どこにある惑星なの?
 1万2000人を移民させるという事で都市宇宙船を作っているけど、そもそも都市宇宙船にしなくっても、冷凍睡眠の技術があるなら、冷凍睡眠の状態で移動する方がエネルギー消費は少ないんじゃないの?都市を形成するからメンテナンスが必要なのであって、相当大きな船でも操船だけならそれほど人はいらないんじゃないかしら。
 ずいぶん後で明かされるそもそもの設定で、ある種の細菌に冒された人々を放逐することが移民の目的に含まれていなら、そりゃずいぶん手間暇かけた処理方法。細菌が人々に悪影響を与えるなら、スペースコロニーを隔離すればいいやん。移民によって、新たに人の住める惑星を開拓するなら、そういう細菌と関係ない人を送らないか?

 
 それから、爆発によりマザーベガーが機能を失い、使役生物であるベガーが人を食べ始め…、とあるけど、ベガーの存在意義はどのように周知されていたの?ほとんど人は知らないなんて、そんな危うい事をなぜしたんだろう。最低船員である人々には知らせるべきだし、そしたらベガーの暴走を抑える活動もできるはずだ。そういう保険をかけないなんて…。それに、ベガーを狩るハンターという機械がマザーベガーがいるスペースを守るって設定はおかしい気がするな〜。ベガーはマザーベガーを襲わないだろう。
 それに、ベガーとシンクできるのは、ベガーに恐怖心を抱かない子供だけってのも…。大人でも必要にかられれば、あるいはテル的な性格を持った大人がいないわけないから、それをしないはずないと思うけど…。

 
 それに何より、18歳で主人公が人々のリーダーになって問題解決に当たっているけど、18年くらいの経験でそれって可能?そんなに成長できるかな〜。自分の18歳を考えると、腑に落ちないよね〜。学ばねばならない事の多さも含めて、睡眠学習があるとかAIが1人1人につくとかしないと…。



 
 が、最後の主人公が若者っているのは、これはジュブナイルSFファンタジーだもの。しょうがないよね。その中では、カリスマ性のあるテルも、優等生的シンゴも努力をしている感があるし、それなりに登場人物は動いている方であろう。





 と言う事で、突っ込みどころはいろいろあるけど、そこそこ読めるジュブナイルSFというのが私の評価。
 

 でも、この世界の基本設定をもっと煮詰めると、読者の幅は広がると思うんだけど…。