「コロヨシ!!」「新月譚」
何となく本が読みたくなって、図書館で適当に借りてみた。未読の本が山になってるじゃないかと言われれば確かにそうなんだけど、まあそれはそれ。
で、一冊目はこれ。
- 作者: 三崎亜記
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/02/27
- メディア: 単行本
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三崎亜紀の本は、確かとなり町戦争 (集英社文庫)と廃墟建築士は読んだけど、奇抜なアイデアを今ひとつ生かし切れてない感じがしていた。こう、状況に対する人の動きが今ひとつ不自然で、だからアイデアの奇抜さが違和感となって残る感じがいつもあった。ややSF、あるいはファンタジーっぽい雰囲気は悪くないだけに、ちょっと残念だったのだけど、これは悪くない感じで一気に読んだ。
架空世界の「掃除」という競技に打ち込む高校生を描く、青春スポーツ物語とでも言うのか?それだけで見ると、ちょっと「風が強く吹いている」みたいなところもあり、また「図書館シリーズ」の雰囲気も持っている。けれどそれにプラスして、「掃除」をめぐる隠謀の正体は…?みたいなややSF的謎が一体化することで、オリジナルな作風になっている。
そして、この本で一番魅力的なのは、架空の「掃除」という競技そのものの描写かなと思う。日本の古典芸能を思わせる競技のしくみも良い感じに作り込んでいるけど、何より、競技する主人公達の心の動きや見るもの感じるものを、細やかに描写している。一瞬を引き延ばし深く語る手法は小説ならではで、本当にそんな競技があったら見て見たいと思わせる雰囲気は良い。これを読んで、ちょっと菅 浩江の永遠の森 博物館惑星 (ハヤカワ文庫JA)に出ていた「夏衣の雪」を思い出した。あれは横笛の家元襲名の話だったけれど、やはり芸とは何か、その本質を感じさせるような描写がとてもよかった。
ただ、「掃除」がなぜ成立したのか、という世界の設定に関わるところの謎はこの作品ではあまり語られない。少なくとも、今作ではまだ十分に語られているようには思えない。けど、これは続きがあるらしいので、そこでどのように「掃除」の謎を解き明かしつつ緻密な異世界を構築するのか、今後の展開が楽しみとしておこう。
詰めが甘かったりすると、一気にがっかりする心配もあるのだけど…。
で、続いてこれに取りかかった。
- 作者: 貫井徳郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/04
- メディア: 単行本
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貫井徳郎の作品は、一作も読んだことはない。新作のところにあって、それなりに読まれている風情だったので、借りてみた。文章は読みやすくて、一気に読んだ。
けど、読みやすいけど、これは何と言えば良いのだろう…。
純愛を書きたかったのか、ドロドロしたかったのか、小説を書くという事を語りたかったのか…。
ある出来事を契機に筆を折ってしまった作家、咲良怜花が若い編集者のアプローチに自分の事を語る話なのだけど、何だか私にはあんまりリアルには感じられなかった。SFとかじゃない普通の小説だから、異世界や人成らざるものと対峙することで見えてくる人の本質とか、そういうものはないのは当たり前。でも、そうすると人と人との関わりの中で、人の恐ろしさや見事さを描くことになるのだろうけど、何だか綺麗すぎる気がする。特に、最後のまとめ方は今ひとつ。
1人の男を取り合う2人の女という設定は村山由佳「野生の風」もそうだけど、あれは嘘っぽい綺麗さを突き詰めたようなところが魅力。恋愛小説ってことで桜庭一樹の「私の男」なんかだと、本当にドロドロでなぜそうなったのか分かりにくいからこそ、こっちに考えさせる。魅力の方向は違っても、どちらもどっか突き抜けた所を感じるのだけど、これはまだ何枚か破れる皮があるんじゃないかという感じがした。
お遊びの本ばかり読む。
たまには、こういう日もありだよね。