hyla’s blog

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「ひらひら」

 結構オススメと、この本を貸してもらったので読んでみる。


ひらひら 国芳一門浮世譚

ひらひら 国芳一門浮世譚


 表紙絵だけ見ると時代小説だけど、実はマンガ。

 作者は実は女性との事だけど、絵は少女漫画と言うより綺麗な劇画風。けれど、デッサンがしっかりしていて、デフォルメされていても、見やすいし読みやすい。


 で、実際読んでみてなかなか面白かった。江戸時代に実在した浮世絵師の歌川国芳一門のお話で、武士だった田坂伝八郎がひょんな事から国芳に拾われ、自分自身を見いだしていくお話。主人公は一応伝八なんだろうけど、それよりも歌川国芳やその弟子達の魅力が光る。一門を束ねる国芳の人柄で弟子達が集まり、一門の掟がつくられていく。その関係は何とも熱くて優しく強い。

 
 彼等は、p115の藤太郎のセリフの「面白くねえと思っちゃ駄目なの。何でも面白がらねえと 何でもな」のように、皆後先考えず、その瞬間の様々な事を面白がる。そして何より大事な事として、「兄弟の成功を祝えねえ奴、困ってる兄弟を助けねえ奴」は「承知しねえ」と語る国芳の元で、さり気なくお互いを思いやり、支え、支えられる関係がある。

 
 その「囚われず 拘らない 軽やかな生」を生きる人々の、なんて良い表情をしていることだろう。以前見た、NHKの歴史秘話ヒストリアの、お馬鹿な人達の回を思い出す。江戸時代と今と、どちらが暮らしよかったかは、わからない。今の時代だって、問題は山積しているし、一寸先は闇だ。全く見通せない未来へ向けてよろよろと歩んでいくしかないけれど、どんな顔をして歩むかはその人次第かもしれない。



 作者は、BL出身の人ということで、弟子達を男の色気たっぷりに描いている。ほんのりBLテイストも感じるけれど、これくらいならほとんど気にならないし、そのものずばりの色気シーンも肉感的ではあるものの上品にまとめている。子供向けではないけれど、これなら大人がごく普通に読んで楽しめる本だ。



 これだけの話を書けるなら、他の作品も読んでみたいね。