hyla’s blog

はてなふっかーつ!

幸せの光景

 
 朝、いつもは通らない所を通ると、職場のサンゴジュが満開になっているのに気づいた。

 白い小さな花は地味だけど、花序が大きいだけに目立つし、今年は例年に比べても花付きが良いみたいで、一面真っ白だ。少し臭い強い匂いに引き寄せられて覗くと、花にはびっくりするほどたくさんのハナムグリが来ている。アオハナムグリとかコアオハナムグリとか複数種いるように思えた。これらはいつもよく見るなじみのハナムグリだけど、これがまたものすご〜くたくさん来ていた。10〜15匹集まっているところが何カ所もあって、全体では少なくとも100匹はいたんじゃないだろうか。

 

 昨日は雨であまり活動できなかった分を取り返すように、皆必死で花に潜って何かを食べている。その身体はどれも花粉まみれで、十分にポリネーターの役割を果たしているようだ。そして、花を食べる一方では、交尾をしているものもいたりして、もうハナムグリにとってここは大合コン会場といったところだろうか。きっと花の中で彼等は、とてもとても幸せなんだろう。


 これほどたくさん花が咲いていれば、当然他にもたくさんの昆虫が来ていて、しばらく見ている間だけでも、アオスジアゲハやナミアゲハ、チャバネセセリが見えた。それから、クマバチやコガタスズメバチや種類は知らないけどハナバチの類。それにオオフウタオビドロバチらしいハチも来ていたし、小さなジョウカイorカミキリが見えた。
 忙しげに飛び回る彼等のたてる小さな羽音は、聞いているだけでこちらまで幸せに気分になってくる。ハナバチは大人しいから、そっと手を伸ばして手に止まらせようとしてみたけれど、さすがに2cmまで近づいたときに逃げてしまった。その瞬間に、ハナバチの羽の動きで起きた空気の流れを手の先に感じる。そんな事がとても嬉しい。





 夕方、仕事が一段落したので、もう一度同じ所をのぞきに行った。

 
 するとハナムグリはさすがに数が減ってきていたけれど、今度はウメエダシャクが何匹も訪れては蜜を吸っていて、その身体にも白い花粉がたくさんついている。蛾も受粉に貢献しているようだ。そうやって近づいて虫を見ていると、花の香りも朝とは少し違ってきているような気がした。朝は、臭い感じが強かったのだけど、夕方は少し弱くなったものの甘い香りの方を強く感じる。
 サンゴジュはスイカズラ科だし、甘い香りにはスイカズラと同じくリナロールが含まれているのだろう。それなら蛾が来ることも全く不思議はない。けれど、朝のあの強い臭い匂いは、多分甲虫やハエなんかを引き寄せる匂いだ。考えていると次々に疑問が生まれて来る。

 ・サンゴジュは、時間によって香りを変えて、咲いている間にとにかくよりたくさんの虫を引き寄せる戦略をとっているのだろうか?
 ・日中の甲虫やハチと、夕方から夜の蛾と、どちらがより受粉に貢献しているのだろうか?
 ・そもそもサンゴジュの花はいつ咲くのだろうか?
 ・個花の寿命はどのくらいなのだろう?
 ・結実率はどのくらいなのか、そして自家不和合性はあるのだろうか?

 これらの一部でも、調べて見たい。24時間、いやせめて日中だけでも、ずっと花の前にいて来る虫を数えたいと思ったけど、社会人である以上無理なのが悲しい…。
 
 
 いろいろ考えながら虫を見ていると、ハナバチは飛び回りながら脚を動かして身体についた白い花粉を落としていた。花粉を集めることではなく、花から蜜を吸うのが今回の目的のようだ。
 それから、花の陰には黒くて腹部の長いハチが真っ白に花粉にまみれたままじっとしていた。別に死んでいるわけでもない。ハチは昼行性だし、花の陰で今夜一晩を過ごすのだろうか?これは、ハラナガツチバチあたりかな?こんな時、ハチの図鑑が見たい…。

 



 で、見ているとホントにどれも楽しげに活動しているように見えて、そんな虫たちを捕まえるのは何だか可愛そうだったのだけど、一匹だけ捕まえてみたのがこれ。小さな丸っこい、これはゾウムシ?


 捕まえてこれを実体顕微鏡で眺めて見れば、一見したところでは地味な灰色と黒のゾウムシだけど、実は表面はたくさんの鱗があった。それが光をはじいて、角度によって様々な色を見せながらピカピカ光る。しかも、背中には鱗が長くなったような毛がまばらに列になって生えていて、これはどんな意味があるのだろう?
 顔を見ると、ゾウムシの割りには短い吻が、ちょっと犬の顔にも見える。これは何だろう?

 


 だいぶん悩んだけど、多分…これはスグリゾウムシ。図鑑にはこんな微細構造は載ってないけれど、実物は見れば見るほど不思議。この不思議な形の意味は何だろう。




 そんな事を考えて、生き物を眺めてぼーっとするのは、本当に楽しい。見ずにはいられない。
 
 
 って、そんな私はやっぱどっか本質的に世間からずれてるんだろな〜。