今日はコゲラ
昼過ぎ、掃除をしていたら、同僚が来て言った。
「鳥がまさに今、衝突しましたよ。」
「え、またスズメですか?」
「いやスズメではない。何か黒と白の鳥です。」
なんですとーーーー!
黒と白の鳥って何だ?ハクセキレイとかセグロセキレイ?それとも、もっと他のもの?
とにかく見なければ、始まらない。掃除なんかしてる場合じゃない。案内されるままに走って行き、「そこ」と示された窓の外のひさしの上に落ちていた小さな鳥を見れば…
コゲラーーーーーーーー!
最小のキツツキ。コゲラじゃないですか。身軽に窓の外に下りて拾い上げてくれたコゲラは、小さい上にも小さくて、一目で幼鳥と知れた。
よく見ると、細く開いた口の中には、血のようなものが見える。ぐったりと動くこともままならない様子で、半分目を閉じたまま荒い息をしている。
これはヤバイかも…。
鳥が窓に衝突するとき、その勢いは半端ではない。いつだったか窓に衝突したキジバトを仮剥製にしたとき、外傷は無くても中を見ると、肝臓はモロモロに砕けて心臓が破裂していたのを覚えている。この鳥も、取り立てて外傷はないようだけれど、同じように内臓や、脳に損傷を負っている可能性はある。もしそうなると、助からないだろう。
そんな事を考えつつ、手の中の鳥を見ていた。
5分…。10分…。鳥はやっぱりぐったりしているものの、けいれんしたり、暴れることはない。ひょっとしたら、いけるかも。もし重篤の内臓損傷があれば、すぐに死んでしまうはずだ。けれど、まだ生きているなら、元気になる?
かすかな期待を感じながら、ティッシュをしいたあり合わせの箱に鳥を入れて、机に置いたまま仕事にとりかかった。
パソコンに向かいながら時々鳥を見ると、半分以上閉じていた目が丸く開くようになってきた。更に、頸を伸ばしては、またすくめるような動作を何度か繰り返している。頸が動くなら、運動神経も大丈夫なのだろう。
けれど、油断はできない。身体に傷がなくても、うまくクチバシが動かなくなったりすることもあって、そうなると自分で餌を採れず死んでしまうこともある。そう思ってクチバシを見ると、拾った時にはかなり大きく開いていたクチバシも少しずつ閉じているようだった。
そして、いい加減時間もたって鳥の存在を忘れた頃、いきなりだった。
パソコンの上に、ばたばたっという音と共に鳥が飛び出してきたのだ。
飛んだ!やたっ。復活だ。衝突は、脳しんとうですんだようだ。なら、急いで離してやらなくちゃならない。
大慌てでそっと手の中に取り込み、そのまま小走りで衝突した窓まで行って、窓の外で手を開いた。すると、鳥はきょろきょろしたかと思うと飛び上がり、そのままふらふらと何とも危なっかしく、けれど何とか飛んで見えなくなった。
これにて、一件落着。
そして、戻ってみれば机の上にも、そして着ていた服にも、気がつけば鳥のウンチが…。
恩を仇で返さんでも良いっつうの…。