hyla’s blog

はてなふっかーつ!

今頃「Blood+」


 先日何となくyoutubeを見ているときに、あるアニメに引っかかった。よ〜く考えると、ずいぶん前に一度、それも一話だけ見たアニメで、全く訳のわからないなりに、ひどく印象深かった覚えがある。それが、Blood+というアニメだった。見たのはテレビの放映で、調べてみるとどうも第21話の「すっぱいブドウ」で2005年の放映らしい。

 当時見たその回では、黒い衣の不思議な能力を持つ若者達は日の光を浴びられないらしいが、なぜ主人公と思しき人物を狙うのか。主人公はなぜふらふらなのか。そして、なぜ血が必要とか言われつつそれを拒否しつつ、徒歩でフランスを旅行しているのか。(てか、荷物はないのか?着替えはどないしてるわけ?)

 
 もう、見たシーンだけではどう考えてもさっぱり訳がわからない。のだけど、そう言いつつ微妙な薄暗さと透明感のある画面で繰り広げられるシーンは奇妙に魅力があった。


 で、今回youtubeでそれを見つけて、思いついて見始めてみた。50作もあるので、まだ全部は見ていないけれど、あらすじなんかも見つつ、基本設定と、だいたいの流れは把握できた。でもって、見ているといろんな言語のものがアップされているのに気づく。英語やスペイン語の吹き替え、あるいは字幕。しかもそこそこ視聴数がある、と言うことは結構人気があるのだろう。
 
 
 確かに、まず画面の作り方が非常に上手くて、アニメとしてのできが良いと思う。沖縄のヤンバルの描写などでも暗闇にヤモリの目が光り、それが消えてまたヘッドライトに移る。木の葉やその上の水滴、更に少し霞がかった薄暗いシーンの中の人物の描写。人や物の動きもメリハリが効いていて、でも自然だし、抑制されたシーンだけで、話の流れを説明しきるのは見事だ。


 また、物語がスタートし、訳のわからない謎を振りまきつつ、ある時点からはそれらがあらゆるところで繋がり始め、そして結末に向かって見事に収束していく。この大風呂敷のたたみ方は、実に気持ちが良い。細かく見ると、例えばいきなりベトナムに行ったりフランスに行ったりしても、言葉に全く困ったりしてないとか、ちょっとそれはおかしいだろう、矛盾じゃないか?と思う所も無いではないが、それでもこれだけ魅力ある大きな物語というのは単純に面白いと思う。
 そして、綺麗に物語は収束したものの、そもそも主人公達は一体何だったのかの謎は解明されない。人間とは思えないミイラの中にいた胎児ということだし、D塩基とやらを持つことからして、地球外からの生物のようにも思える。強靱な生命力を持つそれらは、人の血液を吸収してその遺伝子を元に人に擬態して生まれて来るのだろうか?
 という風に、結構骨太でしっかりした骨格を持つ物語でありつつ、一方でそういう謎を語らないから、そこには想像の余地が残り、だから余計に考えたくなる。そういう語りすぎない作りもよく効いている。


 で、最後にキャラのうまさも良い感じだ。主人公の小夜に対して、兄弟達、赤い盾のデイビットやジュリア、それぞれに明確でよくできたキャラだ。重い物語の一方で、適当にとぼけた明るさを持つキャラが良い感じに効いている。また、腐女子的にはどう見ても、ハジにまず萌えるだろう。「君は光僕は陰」のアンドレの時代から、ああいうキャラはぜえったい現実にはあり得ないだけに腐女子の一つの理想だし、その上にソロモンとか海を配置するのも見事だ。
 そして、そういうキャラが、ある程度普遍性を持つ疑問とそれに対する答えを見いだす当たりで、大人でも十分に鑑賞に値する作品になっている。



 でそうやって見ていて、クレジットに企画に押井守の名前を発見し、納得。この感じはそういや攻殻機動隊の感じに似てるもんな。


 と言うことで、ぼちぼち残りの回も見て行くつもり。
 でも、まだ見ていない押井作品の「イノセンス」も見てみたいな〜。