「医療の限界」
ずいぶん前から借りたままになっていた本を、読破中。
で、とりあえず今日やっつけたのはこちら。
- 作者: 小松秀樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/06/01
- メディア: 新書
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医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何かを書いた著者の新書本で、こちらは一般向けか。文章は理系らしい論理的で明快な文章なので読みやすい。
内容は、
第一章「死生観と医療の不確実性」
第二章「無謬からの脱却」
第三章「医療と司法」
第四章「医療の現場で〜虎ノ門病院での取り組み」
第五章「医療のおける教育、評価、人事」
第六章「公共財と通常財」
第七章「医療崩壊を防げるか」
となっている。
読むと、医療が非常に困難な状況にあって、それでも今の社会の中で社会の要請に応えつつ何とか医療システムを維持しようと、今まさにその最前線で頑張っていることはわかる。恐らくは、診療などの本来の医師としての職務意外に、医療システムを維持するべく頑張っている。楽観的な希望を持つこともなく、シニカルになることもなく、ただ今を頑張っている。そこには、知識人、職業人としての矜持が感じられる。
第一章で、著者は医療というものの不確実性を理解して欲しい、と語る。医療は確率で行われるものだ。危険でない治療なんてない、と言うことを繰り返し語る。どれほど医療が進んでも、治療できないことは確かにある、と言うことを理解して欲しいと。更にその上で様々な改革を行っているという事実を述べる。
それを読むと、「医療現場はここまでやってんだぞ。けどなここまではできても、これ以上については、無理なもんは無理。だから、せめてそこの所を少しは理解して欲しい。」というメッセージを感じる。
で、これを読む人の多くはそういう医療を利用する人ではあるが、医療を支える人ではない。だけど、それにも関わらずこの本を読むからには、医療の置かれた困難な状況に関心を持っている人ではあるはずだ。そういう読者が知りたいことは、私たちがどうすれば医療崩壊が少しでも防げるのか?と言うことだ。
医療現場は頑張っている。熱いけどクールに頑張っている。じゃあ、そんな人達に対して私たちができる事は何だろうか?どんな事が必要とされているのだろうか?
著者は、とても頑張っている。だから、自分たちだけで頑張るのではなく、普通の人々でもできる事があるなら、それをもっと訴えて欲しいと思った。
医療崩壊について情報を集め、分析し、それを広く社会に広めることは、それは本来ジャーナリズムの仕事だろう。けれど、そういう事が上手く行われていないどころか、メディアさえもがその報道により医療崩壊を加速させつつある中で、医療現場に無理難題を要求する人もいる。けれど、普通の人は病院を必要としているし、病院が助け手を必要としているなら助けようと思っている人達もたくさんいる。
だから、今私達ができる事を、それがあるなら言って欲しい。
って、それって私の場合、ちゃんと健康管理して、病院に行かないことかなあ〜。