hyla’s blog

はてなふっかーつ!

なのはな


 買い物に出かけて、ついでに同じ敷地にある本屋に寄った。出ている本を眺めていて、8月号のフラワーズを見つけた。やたらあるようでいて今一つのものが多い今時の漫画雑誌の中にあって、萩尾望都吉田秋生も読めてしまう貴重な雑誌だ。いつものように、手にとってぱらぱらと見てみると、今号は萩尾望都の短編が載っていた。

 
 「なのはな」というタイトルのそれは、放射線よけのマスクをした子供達、ベコを飼うおじいさん、あの日から帰ってこないおばあさん、とフクシマの物語だった。


 東北の地震津波も、未だどこか信じられない。でも地震津波は、今も続いている訳ではなく、困難であれ復興へと歩む人々もいる。
 けれど、フクシマの問題は今も継続している。そして、ずっと先の未来にまで陰を落とすのだ。



 とても重苦しい…。


 
 そのフクシマを題材にした物語を発表すると言うことは、萩尾先生も、出版社も多分勇気がいったことだろう。今はまだ、震災について当事者でないものがそれを語ることは何だか許されないような感じがある。それでも、きっと書きたかったのだろう。書かずにはいられなかったのだろう。「頑張れ」とかではない、けれどメッセージを伝えたかったのだろう。
 物語は、今からほんの少し先の未来のようだ。それは、こうあって欲しいという願いにも見える。

 
 この作品を発表したという事に、私たちは萩尾先生の意志と祈りを見る。
 そういう作品を読む私たちも、フクシマについて、そこを立ち去らねば成らなかった人や今もそこに暮らす人に、もう一度しみじみと思いを寄せる。
 

 
 そして静かに、その未来が黄色く明るく輝くことを祈ってみる。