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「少子社会日本」

 本日2冊目。

少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ (岩波新書)

少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ (岩波新書)

 山田昌弘といえば「パラサイトシングル」「希望格差社会」とかのタイトルは知っていても、まともに読んだことはあんまりなかったけれど、読みやすい文章だし、割としっかりした事を言っているように思える。


  著者によれば、稀に見る日本の少子化の主たる要因は2つ。経済状況の変化による「若年男性の収入の不安定化」が起きたのに結婚・子育てに期待する生活水準が高止まりしている。また「パラサイトシングル」できる歴史的・社会的条件があった為、結婚の先延ばしとその帰結としての晩婚化・非婚化が起きたから。
 更にこの上、男女交際が活発になったために、恋愛と結婚の分離が置き、魅力の格差が顕在化したことにより、より結婚しなくなったとのこと。

 
 で、最後に4つの解決策を提言している。
 「若者に安定した収入の得られる見通し」
 「どんな経済状況においても、一定水準の教育が受けられる保証」
 「低スキルの女性も含めた男女共同参画
 「若者にコミュニケーションスキルをつける機会」

 
 って、根本的な解決策にはなるだろうが、かなり大きな変革だしとても難しい要件でもある。これを、実現するのはかなり困難だろうし、これが実現しても少子化が解決していく方向に向かうのは最低でも20年後だなあ。

 
 こうした問題把握と解決策は、実現可能性は別として、それなりに頷けるところもある。
 ただ、それとは別に、私は少子化を含む様々な問題の起きた背景に、地域社会の崩壊という問題もあるような気がする。かつての農村の地域社会とは別に、高度経済成長頃の昭和30年代〜50年代には、地方都市などではご近所づきあいが結構あったし、その中で近所のおばさんが持ち込む見合い話といったお節介というのも存在していた。そういう細々と繋がっていたそれらのネットワークの担い手は「近所のおばさん=専業主婦」ではなかったか。
 
 
 けれど、「男女共同参画社会」という名の元に、女性を職場労働へ駆り出したことは、そうした女性のネットワークによって繋がれてきた地域社会の空洞化に繋がったように思う。しかも、正社員として働く女性にも男性と同じだけの仕事ができなければいけないと当の女性も思っていたし、男性の正社員の仕事は当時から8時5時で終わる代物ではなかった。かつ、その状況で結婚すれば、家事労働も、子育ても、8割方以上を女性が担う事になる。その上更に地域社会のネットワークの維持に裂く労力がどれほどあるだろう。
 そうやって「お節介なおばさん」がどんどんいなくなってしまった事も、非婚化・少子化に関わっているような気がする。

 
 そして、現代では正社員の労働条件は更に悪化し、たとえ時間的に拘束されていなくても、肉体的に、あるいは精神的に疲弊しきって家庭生活の維持もままならない場合もある。非正規労働ではほとんど給与が低くて生活が成り立たないし、これまた過酷だ。これでは、どうにも始まらない。

 
 だから、会社で拘束する時間を短くし、誰しもが家庭や地域社会でも活動できる時間を確保することが重要なんじゃないだろうか。ってワークライフバランスって奴か。
 

 でも、8時5時で帰れて、持ち帰り仕事なしで、休日出勤なしだったら、ほんとすごく気分が楽になるし、仕事も楽しいよな〜。