hyla’s blog

はてなふっかーつ!

「RANK」

 レッドデータガールと一緒に、図書館からこれも借りた。
 

RANK

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 「ポプラ社小説大賞特別賞受賞作」で、「驚異の新人」の作で、しかも「行動の全てが監視され、数値化され、評価される社会に抗うふたりの青年。」って煽り文句からしてSFチックな作品であろうと想像された。

 で、割と期待して読み始めたのだが…orz。



 なんつうか、とても腑に落ちない作品だったし、それでも頑張って読んだけど途中で本当に投げ出したくなった。



 「監視社会」というのは、とてもありふれた設定だけど、それならそれでちゃんとそうなる必然性が無ければならない。これって、近未来の時代設定をとっているけど、本当に近未来でここまで監視社会ができるかな?更に、日本が舞台だけど州制度が引かれていて「関東州」が舞台だけど、州制度にならないと行けない理由とか、「関東州」が特別になる理由とか、特別執行官は良いとしても、主人公の一人である佐伯や篠田の暴力性がよくわからない。更に最もわからないのが、槌谷の策謀。何でそんな方向へ走ったんだ?という、最も根本的な所に疑念が浮かびます。


 と言うことで、とてもつまらなかった。



 「暴力と人々の虐殺」って事なら、ちょっと前に読んだ「虐殺器官」の方がずっと良くできている。暴力の描写にしても、ずっと上品だし、そこへ来たか〜、というどんでん返しも効いている。ところが、こっちは何よりその物語の骨格に納得がいかないし、暴力シーンもただ汚いだけだ。
 アクションシーンならその迫力が無ければ、って思うなら大間違い。何よりも納得ができなければ、過剰な暴力シーンは陳腐になるだけだ。この作品については、根本的に設定が腑に落ちない。文章に勢いはあるし、500ページ近い物語が書ける力はあるのだと思う。だけど、物語の骨格がしっかりしているように見えないので、まるでぐしゃぐしゃと汚い色で塗りつぶされた絵のようだ。迫力はあっても、何だかよくわからない。


 SFには、監視社会はよくあるパターンだ。その必然性を説明せずに、それを前提に、そこに生きる人々の物語を書くという手もある。けれど、それならそれで、主人公達をいかに魅力的に書くかが勝負になってくる。この物語では、主人公の春日も篠田も佐伯も槌谷も、悪いけどあんまり魅力がない。ただ暴力的だったり、変に軟弱だったりするだけだ。


 だから、私はこの作品は評価できない。

 けれど、それでもこの作品が「ポプラ社大賞特別賞」ってのは、こういうのが最近のはやりなんだろうか。それとも、書き手のレベルが全体に落ちているということだろうか。



 まあ、何よりSF読みするからダメと評価したくなるってことかもしれません。