hyla’s blog

はてなふっかーつ!

「灼熱アジア」

 
 NHKスペシャルを見た。アラブはアジアか?という気はしたけど、液化天然ガスの巨大プラントを次々に建設し、世界の主導権を握るカタールもだけど、太陽エネルギーで動く新都市マスダールシティの画は本当に驚きだった。世界は、もうここまで来ているのだ。
 

 
 石油の埋蔵量はおそらく、枯渇に向けてどんどん減少していくことは間違いない。温暖化防止のためにCO2の増加を防ぐという目的と共に、石油の枯渇に備えて新しいクリーンエネルギーを手に入れる事はこれからの発展に必要不可欠だ。アラブの石油産出国は、すでにその方向に動き始めており、その潤沢な資金を元にほとんどSFのような都市が本当に生まれようとしているのだ。
 21世紀になっても、2010年になっても、宇宙へ旅することはまだできてないけれど、一方ではこうやってSFが現実のものになろうとしていることは、子供の頃の絵本で見た未来に今時分は生きているのだと思われて、なんだかひどく不思議な気がした。


 でも、これを見て同時にとても暗い気分にもなった。、
 
 
 トップダウンで世界の行方を考えて次々に行動をおこすアラブの国々に対して、今の日本はどうだろう。新たな産業の開発どころか、円高にも有効な対策を打ち出せてない。更には、そんな現状にあっても、まだ党の代表戦に出るのでないのなんて事をやっている。その時間と労力があるなら、もっとこういう世界の動きに対して危機感を持ち、それに対する対策を考えて欲しいもの。それなのに、経済と共に政治も停滞をし、ころころと首相は代わり、「高度な技術」という日本の武器もどんどん失われつつある。焦燥感としか言いようのない物を感じる。
 
 
 じゃあ、日本は今何をするべきなんだろう?
 カタールアブダビみたいな、豊富な資金をつぎ込んだ新たなエネルギーの開発は無理だ。お金がないもの。更に、日本には豊富な水とそこそこの森はあるけれど、少なくともエネルギーや資源はない。なら、これまで開発途上国とされてきた資源を持つ国々はどんどん発展する中、今後何とか生き抜いていくためには、やはり資源としての人の育成が重要なんではないだろうか。再生可能でクリーンな最大の資源は人だ。その人のレベルをどれだけアップさせられるかが、生き残りの鍵となるだろう。なら、最も重視するべきは人の育成、教育だし、特に科学・技術を発展させられるような力を持った人の育成は不可欠だ。そうした考えが、新しい指導要領の理系重視の方向性を産み、この予算難の中でもスーパーサイエンスハイスクールなんつう事業を行わせているのだろう。

 
 けれど、人材を育成する事は容易な事ではない。特に「戦後の貧しい生活からの脱却」などの明確な目標がなく、そこそこの生活が産まれた時からできていた若者には、そもそも学習意欲が低下しているし、貧困などに伴う学習環境の悪化もある。それに対して、今発展しようとしている国々の発展を担っている人々は、貧しさを知っており、同時にもっと良い生活があると言うことを実感として知っていて、それが努力すれば叶うと確認している。それは大いなる力だ。


 そんな中で、日本が生き残る為にはどうするべきなんだろう?



 ぼーっと考えて、日本が生き残る為には、日本に、日本人であることにこだわってはいけないのではないかと思った。自分自身のアイデンティティを、日本人ではなく、地球人であるという所におくべきはないか?

 
 どう考えても、今の地球は危機的な状況にあって、少なくとも今のままではヒトだけでなく、多くの生き物が滅びることは間違いない。そういうヒトも含めた地球の生き物を助ける為には、今の科学・技術では無理だ。もっともっと新しいものを開発するしかない。新しい科学技術が地球を救えるかどうかはわからない。地球を救えるような新しい科学技術を作りだせないかもしれない。けれど、このままでは必ず破綻する。だから、ヒトを含めた生き物が生き続けていくために、地球を救うにやはり自然科学を極めて行くしかないのだ。

 
 そして、科学を極めて行く第一の目的は、日本の発展のためにとか、お金もうけであっては行けない。それではもはやインセンティブになり得ない。

 
 60年代の「未来の科学技術」は「もっと楽な暮らし」を実現するもので、それを夢見て人々は科学にとりくんだ。けれど、今の日本では少なくとも、生活するには困らない。もっと良い暮らしって何?と思う。そういう現状では、科学を勉強しようという意欲はなかなか難しい。でも、科学に邁進することは大切だし、それは日本の為ではなく、綺麗事だけど地球のためと思ったら頑張れないだろうか。

 
 「地球人として、ヒトを含めた生き物が生存し続けて行くために、科学しかない。だから科学は大事だ。科学で地球を救うんだ。」みたいな、やや悲壮感を持ったインセンティブを植え付けることができたら、特に日本人は身を粉にして、損得を超えて頑張るんじゃないのかな。「より良い暮らし」はあんまりモチベーションにはもうならない。それから日本をよくするなんてのは、昨今の現状だと、この番組を見た時でもそうだけど、「もう日本も終わったね。日本ってダメダメじゃん」、ってな感覚を抱かせることが多い。でも、「日本の発展」に視点を向けるのではなくて、「地球」に視点を向ければ、「日本」に固執する限り免れ得ない「ダメダメ感」から開放される。
 
 
 「地球を救う」ってのはとても美しいスローガンだ。死にかけた地球を救うため…、なんてヒロイズムは結構心情的に日本人にはあうんじゃないだろうか。それに、神風特攻隊ではないけど、追い込まれれば追い込まれる程、尋常ではない努力をし続ける強さはある。ただし、神風になって散ってしまわぬように、その方向性はきちんとコントロールしてやる事は重要だけどね。


 アラブの国々や、日本も含め全ての国が今クリーンエネルギーに取り組み始めたのは、石油の後のエネルギーを掌握しておいて、新しい時代においても自国が覇権を握るため、あるいは生き残りをかけてだろう。カタールのおじさんが、アブダビの王子様は自分の国の、あるいはアラブの発展を考えて行動している感じで、まず地球の為を考えて行動しているようには感じられなかった。そういう点では、民族っていうアイデンティティは全然グローバル化してない。民族から地球へと広がりをまだ持ててない。

 
 だから、日本人が、日本のためではなく地球のために頑張るんです、なんて言ったら、そんな綺麗事はとてつもなく新鮮に響くのではないか?他の国にも自分自身にも。「日本の不利益になっても、地球全体の生き物の利益になるなら、それを選ぶ」ってくらいの気概を示せれば、日本に対する評価も少しは変わるんじゃないかと思った。実際には、なかなか難しくって、だからこそ綺麗事なんだけどね。でも、「武士は食わねど…」、とか「大義のために…」みたいなのはこれまでの日本人は、結構好きじゃない?



 ともかく、これだけはいえる。危機的な地球を救う可能性が最も高いのは、やっぱり科学だろう。

 だから、地球を救うために、もちっと若者は理科を勉強してくんないかね〜。