hyla’s blog

はてなふっかーつ!

一斉に飛ぶ


 蒸し暑い。湿度に加えて、気温が一気に上がって、なかなか耐え難い。少し動くだけで、背中をつーっと汗が滑っていく。なのに、本日も残業で職場を出たのは夜の10時半だった。もれなくお持ち帰りの仕事まであるのだけど、まっすぐ家に帰らずに、寄り道をいろいろしてみた。というより、そんなだから、寄り道した。間違いなく煮詰まっているのだ。ちったあ、気晴らしでもしないことにはやってられませんって。

 
 で、まず向かったのは職場にある自販機である。むろん、そんな時間だから誰もいない。真っ暗な中を歩いて、そこだけ煌々と明るい自販機の前にたって、周囲をよく見ている。自販機の表面、前の地面、それから側面まで。
 
 「蒸し暑い風のない晩+自販機の明かり」とくれば、そりゃもう答えはむしむしむし


 地面にはコクワガタがひっくり返ってもがいているし、蛾ははりついたように留まっている。それから、ツノゼミの仲間もいるし、小さなゾウムシもいる。そしてなんと言っても今晩目につくのは、大量の羽アリ。雨の後の風のない暑い日ってことは、絶好の羽アリの飛行日和、と思ったら案の定である。


 少し大きな飴色の羽アリは、多分トビイロケアリの女王だろう。それから、オオハリアリの女王もいる。でも一番多いのは、1?ほどの小さな羽アリで、至る所に、まるで風に吹き寄せられた花びらのように集まっている。夜の闇の中で、キラキラと動きにつれて羽が光を反ね返す。街灯の下でじっと彼らの様子を見ていると、不思議な気分になる。


 誰も知らない。人間は。けれど、ここでは、おそらく静かに、でも狂乱の群舞が行われている。


 光の中には、クロオオアリのワーカーも忙しげに動き回っていて、クロオオアリは羽アリを捕まえては、まだ動いているそれを咥えて運んでいる。陰の方にも、羽にかみつかれてしきりに逃げようとしている個体がいる。歓喜と絶望が渦巻く乱舞だ。

 
 ひとしきり眺めて、次はコンビニに集まる虫を確認し、田んぼの中の自販機を確認し、それから橋の上の街灯をチェックして帰った。

 田んぼの中の自販機では、様々な大きさのアマガエルが、そこに集まる虫を一心に食べていた。
 橋の上では、多くの羽アリに混ざって、(たぶん)ヒメガムシがこれまたたくさん集まっていて、その中にはたくさんの轢かれた死体もあって、それを食べるべくゴミムシ類がうろうろと歩いていた。


 ヒトには寝苦しい晩だけど、一方ではそんなドラマがある。


 結局家に着いたら、11時を過ぎていた。





 さあ、仕事にかかろう。