コシアカ現る
職場の建物は、古いコンクリート造りである。その深いひさしの下には、数年前から何度かツバメが巣を作った。けれども、少しずつ十日あまりで巣をつくり、卵を産んだ頃に決まって繁殖は失敗する。同じく敷地内で繁殖しているハシボソガラスにやられるのである。平日は人がたくさんいるので、カラスもあまり建物には近寄らない。けれど、休日にはさすがに人もおらず、月曜日に出勤すると、落下して壊れた卵や巣を見ることになる。
今年は、春に寒かったせいか、この周辺ではいつもの年に比べてツバメの繁殖が少なく、職場でもツバメが繁殖を試みることはなかった。
ひさしの下の壁面には、半分壊れたツバメの巣が放置されていたのだけど、一週間ほど前その下に土の塊が落ちているのに気づいた。
そして、昨日ふと見ると、巣はきれいに修復されて、ツバメが出入りしているではないか!
しかし、その巣の形はいつもと若干違う。ツバメの古巣の上に積み重ねた土はそのまま伸びて天井につき、ぶら下がる形となって側面に5×10cmほどの横に細長い口を開けている。
これってツバメでなくって、え〜と・・・。と考えていると、ひゅんっと巣の主が飛び込んできた。ツバメより若干長く大きく感じる細い翼。ほおに赤みは少なく、何より腰は赤茶色。
コシアカツバメ〜!
そういや、近くの川や海岸では、ツバメに混じってよくコシアカツバメを見ていた。そんなコシアカがどうやら深いひさしに目をつけて、巣を構えたようだ。
邪魔にならないようにそうっとのぞいてみると、巣の中には2つの頭が見える。
じっとしているところを見ると、もう既に卵は産んだのだろうか?餌は十分あるだろうか?
ツバメの巣は結構あるけれど、コシアカツバメの巣はあまり見ない。1980年代に比べると、ツバメでも最近めっきり減ったけれど、こうしたぶら下がり型の巣は、深いひさしがなくてはかなわず、そういう家が減っている現代は、コシアカツバメにとって住宅事情はよくないのだろう。調べていると、香川県では一応レッドデータ種になっているようだ。
ツバメでも繁殖に失敗した場所だ。それともツバメだからダメだったのか?とっくり型の巣を持つコシアカツバメは繁殖できるだろうか?
ちょっと心配しながら、ちょっと期待しながら毎日見ている。
んが、そういう自分って、他の人から見れば怪しい人だな〜。