ほんとうはこわい「やさしさ社会」
- 作者: 森真一
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/01/01
- メディア: 新書
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ちくまプリマー新書の一冊。プリマーのシリーズなので中高生を対象としていて、きわめて読みやすい。
家至上主義から国家至上主義、会社至上主義と変化し、「自分至上主義」となった現代は、とにかく今は徹底して楽しまねばいけなという感じている。そのためには、場の空気を読んで、順位をつけず、キャラを演じてその場の楽しい空気を乱さない事がきわめて重要となる。
それは、一時的に傷つけても未来を見通して「優しい厳しさ」でもって率直に行動する時代から、「厳しいまでの優しさ」を教養する社会となったということである。「やさしい社会」は良いばかりではなく、「優しさ」を強要する無言のルールの息苦しさが現代であるって話。
確かにそういわれれば、なるほどと腑に落ちるところがある。特に今の若者は、集団の中で良くも悪くも突出すること、あるいは失敗して恥をかくこと、傷つくことをおそれている。
けれど、それは今に始まったことではない。私もまたそういう「厳しい優しさ社会」の中で、ついつい自分の嗜好のままに行動し、空気を読まない発言でもってその場を凍らせてしまったことは数多い。おかげで「集団から浮く」という懲罰受けまくりで、今やすっかり人間恐怖症。
結構生きづらい人生だったなあ・・・。(遠い目←)
そういう「しんどい」て「こわい」「やさしさ社会」は特にグローバル化と不況の中で、日々ストレスにさらされる現代の状況からみて改善しないだろうから、「気楽」に様々な事に当たることと、今は失われたコントロールされた「攻撃」を取り戻せ。と著者は語る。
でも「気楽」に生きることは、本当に難しい。人間関係の失敗を重ねるほどに、どんどん萎縮し慎重の上にも慎重になったり、内部へ鬱屈するものだ。「どうして自分はこんなにダメなんだ。」「こんなことさえできない」と、自分を全否定したくなる。
そして、まじめにそういう事を考えれば考えるほど、自滅の道を進むことになるのだろう。
だから、この本のように、特にそういうあなたがダメなんではないから、何もかもからもう少し気楽に生きてもかまわないよ。と受容してくれる言葉は結構うれしい。もう少しだけ、がんばってみようか、少しだけ自分の意見を表明してもいいだろうか、と思う。(ひょっとしたら勘違いかもしれないけれど。)
ジュニア向けだけど、最後の後書きには更に知りたくなった人のための参考文献が紹介されている。
ジュニア新書であっても、新書を読む若者がそう多いとは思えないけれど、でも確かに若者にも読んでほしい内容。
ああでも、4月1日なのに、全く空気を読まず、何のひねりもないエントリー・・・。