虐殺器官
- 作者: 伊藤計劃
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/02/10
- メディア: 文庫
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車の免許の更新ついでにお休みをとってみた。
ゴールドなので、さほど時間はかからない。更新が終わった後、そのまま久しぶりに高松で買い物をした。あれもこれも山ほど買って、ついでにこの本も買ってみた。何となく書名はアンテナに引っかかっていたけれど、タイトルと装丁は今一つ好みではない。どうしようと思いつつぱらぱらとめくって、やみやすい文章に購入を決めた。
で、夜になって本腰入れて読み初めてみて、こりゃウマイわな。
読後感は、神林長平っぽくもあり、山田正紀的でもある。幻詩狩りとか、アニメのパトレイバーにも似ている。
「虐殺器官」とのタイトル通り、これでもかってくらいに残虐なシーンが目白押し。けれど、全編どこか静かな雰囲気が漂っている。
ごく絞られた場面と人物だけで物語ができていて読みやすいけれど、それだけのシチュエーションでこれだけの大風呂敷を広げて、ちゃんとそれを閉じるのは立派。虐殺というテーマではあっても、おどろおどろ感はそれほどなく、ひねりなんかがいかにもSF者好みで、上品な仕上がりだ。
最後のひっくり返しは、どこかグレッグ・ベアのブラッド・ミュージックなんかとかぶって、ほろ苦い。
難をあげるとすれば、あまりにもきれいにまとまりすぎていることだろうか。「日本沈没」とか「司政官シリーズ」とか「100億の昼と千億の夜」とみたいな壮大なスケールを好む人には、いささかこじんまりとし過ぎている。けれど、デビュー作で、これだけの高いレベルの本格SFをかけるのは相当すごいと思う。
後書きを読むと、著者は亡くなったということだけど、SF読みにとっても出版社にとっても残念なことだ。さらに熟成した40代〜50代の作品を読んでみたかったな。
同じ作者の「ハーモニー」も読んでみたいけど、Jコレクションは置き場が・・・。
買うべきか買わざるべきか・・・・。