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植物は何を見ているか

 
 

植物は何を見ているか (岩波ジュニア新書)

植物は何を見ているか (岩波ジュニア新書)

 年度末なので、本を返却しないといけない。これも図書館から借りた本で、岩波ジュニア新書の一冊。植物の光関知物質であるフィトクロムの第一人者の語る研究史で、ジュニア新書だから読みやすいか?と思ったらなかなかハードだった。

 
 植物に光合成色素があることは常識だけど、植物にはそれ以外にも光屈性や光周性の元となる光感受物質が含まれている。一番よくしられているのはフィトクロムだけど、それ以外にも、クリプトクロム、フォトトロピンなどもあり、またそれらの働きも一様ではないそうな。その複雑怪奇なしくみは、ある程度把握できれば楽しいだろうけど、あまり知らないと特にミクロのしくみばかりなので、相当集中しないと一気に訳がわからなくなる。読破するには気合いのいる一冊だ。
 
 フィトクロムに代表されるような光感受物質が植物にもあり、植物は固着生活をするが故に、動物に比べてもはるかに敏感に環境からの刺激に反応する。特に光には激しく反応していて、タイムスケールを変えてみれば、植物は実はものすごくよく動いている。普通の人は、植物はまるで動きのない生き物と考えることが多いだろうから、そういう概念を覆す話は楽しいと思うのだ。


 けれど、たぶんこの本は、ほとんどの人は読破仕切れないだろう。本来のターゲットであるジュニアだけでなく、大学生でも難しいのではと思う。(本気に植物生理学を学ぶような人はいけるだろうけど。)なんちゅうか、あまりにも詳しくなりすぎなのだ。さらに、人がどのような実験をおこない、どのように事実を証明したのか、というスタイルが延々と繰り返されるので、単調。

 
 読み物として読みやすいものにするのなら、話をフィトクロムだけに絞ってもよかったのではないかと思う。そして、フィトクロムに関わる実験の裏話とか、それに携わった人の人となりをもう少し丁寧に物語として記述して行く方がたぶん読みやすい。植物の反応について、やっとわかったと思ったら、わかったが故にさらに謎が膨らんでいくその困難さと楽しさ、それを示して終わったらよかったかなと思った。


 でも、岩波はやっぱり良心的な本が多いし、岩波新書は大好きだし、岩波の子供向けの科学の本とかも大好きだ。

 マイナーな内容ではあっても、地味〜にこういった本を出し続ける姿勢は好きだな。


 がんばれ、岩波書店




 ということで、何とか返却。