hyla’s blog

はてなふっかーつ!

正社員が没落する。

「貧困大国」で有名な堤さんと、「反貧困」の湯浅誠という貧困問題のスペシャリストの二人によるルポと対談。それぞれの著作では、アメリカや日本でそれぞれどのようなお題目によって貧困層が作られ拡大・固定化しているかが述べられてきた。日本のそれの場合は特に、ワーキングプア・フリーターからはいあがることの困難さが中心だったと思うけれど、今作はタイトルどおり、正社員だって貧困と労働市場の悪化を他人事とすませることはできませんよ、という話。非正社員契約社員の問題を放置することは、労働市場の悪化につながり、それは自分の首を絞める。実際にその没落は急激に広まっている。そのことを象徴する例として、医者と教師がワーキングプアとなるアメリカの例が冒頭で提示される。

 貧困大国アメリカは、「明日は我が身」というよりは、実はアメリカだってこんなに悪い、と低きをみて我が身を慰むるみたいな受け取られ方をしたからこそ、あれほど売れたんではないか、とある新聞の書評に書かれていた。
 そういう点で、今作はそのアメリカの悲惨な現状をみて溜飲を下げたであろう人々への警告。



 実際、日本の医療も教員も鬱に代表される心身症は多発しているし、離職者も増えてきている。でも世知がらい世の中で(「投げだし」安部首相の頃に比べれば、バッシングはましになったといえ)何かといえば攻撃対象とされていることは同じ。けれど、この本に従えば、それこそ、中間層を代表した層の崩壊を示唆するものだとか。
 

 ただでさえ薄くなる中間層。
 今年、就職氷河期が以前にも増して酷くなって再来し、今年就職できなかった高校生・大学生はどうなるだろう。中間層を形成するはずだった彼らはどうなるだろう。


 そういう中間層の崩壊の解決策として、本では労働組合の重要性を語る。団結するよりないと。それは意外と力を持っている。と前向きに語って終わるので、賛嘆たる現状を伝える割には読後感は悪くない。けれど、組合ってなんだか無力感が漂うんだよね。さらに組合は結構バッシングされる。たとえば教育が悪くなったのも、犯罪が増えたのも、世の中が悪くなったのも、不登校が増えたのも、みんな日教組のせい。JAL がつぶれたのはごうつくばりの組合のせい。そういうのをみてると、組合には関わらない方が良さそうだと思う。
 だけど、この本を読むと、そんな風に組合が廃れてこのまま組合が崩壊すると、本気に困るかもしれないと思う。


 グローバルと規制緩和ってお題目の元にいろんな事が相当変わってきつきつになったのだけど、実際グローバル化は、まだまだ序章だろう。ということは、日本を含む先進国であった国の中間層の崩壊と新たな階層社会の成立の果てにどのような社会が成立するにせよ、新たな安定を得るのはまだ先だ。そういや昔読んだSFでは、地球が国という単位から一つのまとまった社会になる際には、得てして争乱が起きていたよなあ。

 
 でも、そういう時代に私達は生きている。そして、新たな枠組みをいかにつくるか、どのように作るか、それはまだ決まっていない。


 それを決めるのは、それを問われているのは、自分かもしれない。だから、そういう問題に直面して、問題に取り組むときには、それによって利益を得るのは誰か、不利益は誰にとってなのかを考えねばならない。

 
 
 今の自分には、組合活動をする時間も気力もない。ボランティアやNPOとして活動する余力もないし、もしできる時間があるならまず人間以外の生き物に関わりたい。



 けれど、そんな自分でも、社会を微分的小ささではあっても支えているに違いはない。だから、たった一つできることは、そういう現状を知ることを投げ出さないこと。錯綜する情報の中で、多様な情報を自分なりに受け止め、考える事。おばかだし、エゴイズムにとらわれているので、自分の都合のよいような情報をばかりえてしまうやもしれない。だから、本を読み、新聞を読み、たまにはテレビも見て、ネットを眺める。そしてつぶやいてみること。
 
 それって意外ときついときもある。好きなことだけをしている方が、みて見ぬ振りの方が楽だ。
 
 
 けれどまあ、それを投げ出さないようにはしていきたいもんだ。




 というのは、本を買う言い訳かも〜。