おまえが若者を語るな
正月用に、図書館で借りたのだけど、正月に入る前によんでしまった。
おまえが若者を語るな! (角川oneテーマ21 C 154)
- 作者: 後藤和智
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/09/10
- メディア: 新書
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で、ハズレである。何とか読了したのだが、まあ読みにくい文章だわな。そして判ったことは、この著者はとっても宮台真司が嫌い。
私はあんまり社会学については詳しくないので、実際宮台真司や東浩紀なんかが現在どれだけの影響力を持っているのかはよく知らない。けれど、これはまたあんまりすぎると思う。
これは、宮台批判なのだけれど、批判になっていない。著者の批判の仕方はただ1つ。
「データを統計的に解析して正しさを検証してないからダメ」。
著者は建築を学ぶ大学院生ということで、普段よりそういうやり方になじんでいるのだろう。また実際、社会学にも苅谷剛彦とみたいにアンケートをとり、それを統計的に分析して状況を割り出すというやり方もあるだろう。それでも、どのようなくくりであれ、それにそぐわない存在は必ずいる。それを持って大雑把な分析を否定しても始まるまい。そういう見方もあるんだな、と考えれば良いことではないのか?
なんだけど、データをとってないという理由でそれらを全部否定する。更に、「フリーター」「ニート」といった今時の問題は「雇用」や「経済」の問題で語るべきで、「世代論」で語るなというのは1つの主張として良いけれど、この文章では「世代論」そのものを全否定するようだ。
「世代論」によって、より明確になる問題もあるかも知れないわけで、「こういう場合には「世代論」は重要だけど、この問題ではそうではない。」といった批判なら建設的だけど、この本を読む限りは、人の話を聞く気が全くないように感じられ、だからとても不毛な気分になる。
それに、著者は殊にまさに今の若者についての「若者論」が不満で嫌いらしいが、その時代時代において、「若者」が肯定的に語られたことなんてそもそもないだろう。
1960年代の「全共闘世代」も、70年の「しらけ世代」も80年の「新人類」も、どれだって「今時の若者は・・・」のニュアンスでしか語られていない。
社会学には、そもそも「絶対正しい」ものはないのではないか?たとえデータをとって統計的に解析したところで、確率的に低くたって例外は必ずいる。その少数が大事な場合だって有るだろうし、そうでないことも有るだろう。
だから、それぞれが自分の考える枠組みで世界を語り、それによって混沌とした社会のなぜ?が一部であっても多少なりとも説明出来ればそれで良いのではないかと思う。
著者は批判する人々の文章を一部をそのまま書き並べて批判するばかりで、自分のとらえる社会の枠組みを語らない。個人的なブログならば別にそれでかまわないと思うが、本としてはそれはどうかと思える。
なので、ハズレです。