hyla’s blog

はてなふっかーつ!

同定


 ちょっと落ち込んだ気分で、気分転換がしたくなった。

 そこで、夕方25℃にした恒温器の中に入れてあるアリの巣をとりだした。8月に採集したアリの巣は、たくさんの女王アリが含まれていてワーカーの個体数も多かったので、新しい飼育セットをつくってその後2つに分けた。両方とも順調に維持できていて、次々に卵も増えている。

 んが、このアリは何アリなのか?オオズアリなのか、その他のアリなのか?

 と言うことで、日本産アリ類全種図鑑 (学研の大図鑑)を元に、同定作業に取り組んだ。


 この図鑑はアリだけの図鑑だけど、日本のアリは全部カバーされていて、検索表もあって写真も奇麗で分布図なんかもあって、実によくできている。価格も、これだけのレベルの図鑑としてはお安いと言えるだろう。でも、買って生態の説明のところは楽しく読んだけれど、検索表を用いた同定にはつかった事がなかったのだ。せっかく捕まえたアリ、せっかく買ったアリ図鑑。使うしかないじゃありませんか。


 で、実体顕微鏡を出して、アリの巣から数匹とってエタノールで固定して観察した。当たり前だけど、アリはちっさい。3mm弱のそれを、最大倍率に拡大するもやっぱりちっさいのは見にくい。

 まずは腰の部分の突起の数をチェック。これはこぶが2つあることが比較的容易に判明。触角の出方とか節の数、脚の先の爪の形とか胸部の突起。そういうものをチェックしてまずたどり着いた種類は、見てみると香川県に分布していなかった。


 と言うことは、どっかで判別をミスったのだ。最初に戻ってやり直した。



 小さなアリをあっちから見て、こっちからみて、頭を見て大顎を見て・・・。

 とやり続けて、今度は別にアリに行き当たった。アシナガアリである。分布図では日本全国に分布しているし、「最普通種」と書いてある。


 
 これで当たりかな・・・。と思って、生態についてネットで確認した。


 そしたら、とあるページに「アシナガアリは全て単女王制」と書いていた。





 あたしのアリさんには女王が複数いるんだなあ〜。と言うことは、違う〜。やり直し・・・・。




 だけど、時間切れになった。



 結局、種名は判らなかった、というオチである。なんちゅうかね、アリの同定は本当に半端なく難しい〜。







 でも、そうやってあーでもない、こーでもない、と生き物を眺めて考える時間は、他の事は考えなくてよくて、純粋に知識を蓄える事はやはりそれはそれで楽しい。


 帰りには、車まで少しだけ遠回りして、足下の地面を注意深くアリを見ながら歩いた。クロオオアリ、クロヤマアリとあとよく判らないアリが少なくとも2種類いた。プロが見れば、もっともっと識別できるんだろうけれど、香川県の普通種のアリだけでいいから、識別できるようになれれば楽しいだろう。大学で植物採集をして植物のの名前を覚えた時に、それまで単に緑一色にしか見えなかった世界が、驚くほど多種多様に見え始めた時の楽しさは今でも覚えている。アリの識別ができれば、それはそれできっとまた世界が明確な輪郭をもって感じられるんだろう。

 
 
 そういう楽しさって、まず人には理解はしてもらえないけれど、ささやかに自分だけの楽しみとして、気晴らしとして、時にそうやって生き物を眺めてみる。



 何の役にもたたないけれど、そういうのが一番好き・・・・・・つーのは、やっぱマニアかね〜。