事件です!
それは午後も半ば過ぎだった。外の仕事をすませて部屋に帰ってくると、同僚から
「ちょっと来て下さい。すごいです。」
と言われた。
言われるままに付いていきながら、ふと思いついて、
「デジカメあった方がいい?」と聞くと
「ああ、絶対あった方が良いです。大物です。」
という。
と言うことは、いくら何でもカワラヒワなんかの小鳥とかではなさそうだ。カラスとかなら、そう言うだろう。「大物」で「すごい」それは何?
考えつつ、中庭にむかった。どことは聞かなくても判る。何となれば既に人だかりができていたから。その人だかりに、何事かと更に人が集まりつつある。そんな人の中にずいっと入り込んだ。そこでみたものはこれ。
更に近づく。
そして、これ。
この爪、顔の白いライン。これは・・・。
「タヌキですか?」
「タヌキと似てるけど、これはタヌキとちゃうよ。これは、アナグマよ。すごいねえ、アナグマや〜。」
「アナグマって珍しいんですか。」
「そやね。タヌキはよっけおるけど、アナグマはあんまりみんね。アナグマはもうどっちかと言うと山の方やし、数も多分タヌキよりは少なくて、私もこれまでに3頭しか見たことない。これで4頭目や。」
「出れんかったんですかね。」
「アナグマやから、穴に潜り込むことも多くて、たぶん土管の中に入ってしもたんやろう。で、ここの蓋との間の隙間から出ようとして頭がはさかったまま、動けんようになって死んでしもたんやろうね。可哀想なことしたね。もうちょっと早く気付いていたら、逃がしてやれたのに。」
「ほんまですねえ。この脚とか、めちゃ可哀想。」
そうなんである。脚の裏はこんなになってしまっていたのである。
しかし、それでもかなり以前に死んだ訳ではなさそうで、特に死臭というほどの匂いもなく、虫も来ていない。
「埋めようよ。」
という声に、
「ほなけど、これって一応、県の準絶滅危惧種なんよ。きちんとデータをとった方が後々役にたつんよ。ほなけん、もらうな。」
と返答し、そのままもらった。
部屋に持ち帰り、早速に計測をした。
体重:4.3kg
全長:62cm
尾長:11cm
後足長:6.4cm
耳殻:2.5cm
といったところ。さすがにタヌキよりは、大きく重いが5kgないところを見ると、昨年生まれの個体か?年齢は、歯で推定するらしいけど、さすがにアマチュアの私にはわからない。
ついでにおしりを除くと、こんな感じで、多分雌。
で、とりあえずそこまで計測して、そのまま冷凍庫に突っ込んだら、冷凍庫は何とか入ったけど、あっというまに満杯。
とりあえず、これで今日のところは何とかなるのだけど、この後どうしよう。ニホンアナグマの交通事故とかではない、完全な標本。頭骨のみならず、全身骨格だってとれちゃう。いや、ここは仮剥製にするべきか?
悩むところではあるが、しかし今年度内に処理せんとなあ〜。とはいえ、できるか?
嬉しいが、悩ましい事件。