hyla’s blog

はてなふっかーつ!

月の裏側

 これを返却した。さすがに、恩田陸はさくさく読める。

月の裏側 (幻冬舎文庫)

月の裏側 (幻冬舎文庫)

 で、これって水郷の街で、そこに住む住人がある日いなくなって、また帰ってくる。で、帰ってきた人は元の人とうり二つなんだけど、どこか違う・・・って話。


 で、こんだけ聞けば、それだけでオールドなSF者は、フィニイの「盗まれた街」だな、と了解。実際、作中にもそのネタがでていて、多分とっても好きな「盗まれた街」へのオマージュなんだろう。


 で、「盗まれた街」では、主人公達の反撃によって、侵略者達は地球に住み着くのはめんどくさそうだとばかりに諦めて宇宙にたちさるのだけど、こちらでは登場人物達は次第に疲れ、そして自分たちが作り替えられる事を受け入れる。水の中に潜む何かと一体化し、再生される事は、どこか甘美な感覚をもって描かれる。
 私は、もし何か別の生物に取り込まれることがあるなら、それが不可避ならそれもしょうがないかと思ってしまう人間なので、特に唐突ではないけれど、この展開はある意味危険な選択だな。それとも普通の感性ではあり得ない選択だからこそ、ぞくっとした感をもたせられるのだろうか。


 この作品は、特に初期の作品らしい。確かに、細かなディテールをみれば、ちょっとそりゃ矛盾じゃないのか?とおもうところもある。例えば、取り替えられた人間や動物は、火葬すると骨が残らないという。けど、そういうのがずっとあったのなら、これまでに発覚しなかったのはなぜ?更に、突如水の中の何かが大規模に活動を初め、街は全ての情報から切り離されてしまう。誰も、いない街の中をさまよう描写は不可思議で印象深いけど、突如連絡を絶った街について、近隣の自治体や住人が怪しまないはずがない。そういうところの反応はどうだったの?
 そういうところを書き込めば、多分これの枚数では絶対に収まらないだろうし、コンパクトにまとめる為には今の形でいいのかもしれない。また、この本では自分の「盗まれた街」を、セピア色した乾いた60年代のアメリカをじっとりと湿った日本の水郷に置き換えて書きたかったんだと思うので、それならきちんとかけていると思う。


 ただなあ、50ページくらい読んだところで思ったのだけど、多分これは前に一度読んでいる。つまりは、その時にもさくさく読んで、忘れちゃったんだな。

 

 まあ、忘れっぽい私がダメなんだけど、印象深い作品なら忘れる訳がない。
 




 と言うことで、さくさく読みやすい、それを是とするか非とするか・・・・。