hyla’s blog

はてなふっかーつ!

本を読む


 もう、諦めました。暑すぎて、外には出られません。

 と言うことで、昨日借りてきた本をがんがん読むふけるのみ。まったく、こういうだらだらした休日の過ごし方ではいかんかな〜、と思うのだが・・・。


 つーことで、2冊目はこれ。
 

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)



 もうかなり古くなってしまって、今は更に3年で辞めた若者の行方についての新しい本が出ているが、3年まででどんどん辞める、って嘘じゃないのね〜。先日の同窓会でも、最近の若者の驚くべき行動って言うのを良く聞いた。


 けれど、そういう若者が増えるのも、これまた採用する側の要求によるのだろうと、この本を読んで思った。
 
 
 バブルを経て、「何でもやります」的な人間ではなくて、「こういう人間だから、こういう仕事を目指している。それを持って御社に貢献したい」といえる人間を探すからこそ、ミスマッチが増える。という指摘は確かになるほどと思わされる。また、成果主義と言われつつ実際には綿々と続く「年功序列」と、経済成長が行き詰まりどう考えても増えそうにないポストの中で将来が見えてしまうが故にやる気を失う、というものもよくわかる。


 この本は、タイトルは「若者」だけど、実際には急激な社会変化、そして会社という組織の変化の中で、それぞれに右往左往している人々全体が取り上げられている。「年功序列」という昭和的な感覚に踊らされて未来もないのにこき使われる若者、就職氷河期をまともに受けそもそも正社員になれなかった世代。バブルを謳歌したものの一方で成長できる年代に経験を積むことなく、器がつけば成果主義の中で年代的にも転職できるあてもなく働くバブル世代。高給取りであるが故に、リストラで真っ先に狙われる中高年。



 読みやすいだけに、だんだんと、「あーーーーー、全く誰がこんな世の中にしたんだよ〜」と、くら〜く思えてくる。



 で、著者は例えば技術の蓄積・継続といった「年功序列」の良い面も認めつつ、負の面をこれでもかと提示しつつ(そもそもサブタイトルは「年功序列が奪う日本の未来」だし)、安易に昭和的な価値観を引きずる事の危険性を訴える。昭和的な価値観を捨て去った時には、また新しく明るい「自分で道を決める自由」が待っていると説く。

 
 けど、3年で辞めていく若者って、若者気質の変化というものもありはしないか?学歴うんねんとは関係なく、あまりに脆弱な若者が増えている感がある。それでも、非難はされない。というか、非難してはいけないのだ。不登校になるのは周囲が悪いのであって、本人に対して、「強くなれ」と言った指導は厳禁である。そういう成長過程を経てきた若者に対して、「自分で道を決める自由」とか言っても、その力がないような気がする。そういう若者に「自由」を与えると、得てして自分探しの迷宮にはまり込むんだよね。

 決断力を持ち自分の力で自分の能力に磨きをかけつつこの世界を泳いでいける人ばかりならいいけど、必ずしもそうではあるまい。そして、どうしようもなくなった時の最後のセーフティネットももはやありはしない。実際、ただ生きていく事さえも困難な人が出現し、じわじわと増えている点をどうするんだろう。


 確かに、これから世の中に出る、あるいは既に働く私たちは、会社が自分を守ってくれるなんて幻想は持たない方がいい。その発想と常に怠らない準備こそが、これから大事だと思う。だから、そう言うことを非常にわかりやすい文章で明確に訴えるこの本の存在意義はある。

 
 その一方で、企業が採用する人に要求するスキルはますます高度化するけど、それに対応できない人は・・・?この本は、そういう人に対しては、光を当てない。高卒ではもはやほとんど就職のない現状、地方の中小企業の単純労働でさえも中国などからの雇い入れを増やし、その結果高卒では就職先がない。しかし、大学へ行く学費もない。大学へ行っても、就職できない。


 もちろん、町立、市立の小中学校、県立の高校だけを経て東大に入学する学生だって皆無ではないだろうから、就職先のない人に向かって「自分が努力しなかったから」と言い切ることは可能だ。けれど、いわゆる格差社会の中の敗者とは、自分自身の責任で敗者に成る者ばかりではない。そして、敗者のルサンチマンを如何に処理するか、社会不安を如何に防ぐかは重要なことでしょうに。


 それらはこの本のテーマではない。だから、それらについて述べないのは当たり前とは言えるのだけど、ここで対象とされていない人こそ問題なのではないか、となんだかもやもやした気分が残ってしまった。わかりやすいし、一読くらいの価値はある。ヒットした「内側から見た「富士通成果主義の崩壊」も読んでみたい気はする。

 


 けど、もやっとするのは、「それも大事だけど、もっと大きな問題があるんじゃない?」と思う、そこなんだろうなあ〜。