hyla’s blog

はてなふっかーつ!

二冊目


 夕方になって、また頭痛。休みだし、あれもこれもしなければいけないが、ここは何もせずひたすら布団に潜り込む。しばし微睡んで、さすがにじっとしているのも飽きて、枕元の本を適当にとって読み出した。

 これ。


 

アイの物語

アイの物語

 


 タイトルはそれなり。「アイの物語」でロボットの自意識を取り扱うとなれば、かの名作、「I  Robot」を彷彿とさせるじゃありませんか。タイトルだけで、旧世代のSF者のはそそられること請け合い。この作家は、何となくライトノベル的な雰囲気が濃厚で手を出しかねていたのだけど、図書館にあったので借りてみた。
 
 
 そして、実際なかなか悪くはなかったのだ。短編・中編を組み合わせながら、大きな1冊の物語をつくるというのは、全体のテーマがはっきりしないと散漫になるけど、これはきちんとしているし、肝心のロボットの自意識やロボット三原則と人間に逆らうことの葛藤みたいなもののそれなり。

 
 個人的には、「詩音が来た日」が好きだ。介護ロボットというのは、これまたしごくありふれたモチーフだけど、死ぬことの恐怖に怯えるワガママな老人に対して、ロボットである詩音が「愉しい記憶の中に生きること、楽しい記憶をつくりましょう」と呼びかけるあたりはなかなツボに入る感じで上手いと思う。その詩音に介護という仕事を教える女性と、オタクなロボットの制作者を普通なら恋愛関係にしそうな所を、あえて避けているのもいい。


 それに比べてしまうと、表題作の「アイの物語」はやや絵空事な感が否めない。攻殻機動隊から抜け出たようなアイが現実世界にいきなり出現というのは、ちょっとリアリティーが・・・。人間のように動くアンドロイドというのは、技術的に相当大変なものだし、それを一気にバーチャルリアリティー的な精密さで製作できてしまうというのはどうだろう。更に、それだけの技術がありで、ヒトの脳(人格)のコピーをバーチャル空間には作れないというのはアリだろうか。半身不随だとか、体が死んでしまったヒトの人格コピーがコンピュータ内で更に成長していき、そうした人格とロボット達の人格の間に何らの違いが認められなくって・・・。という発展系の方がありそうだ。


 しかし、部分的にどうかな、と思う部分はあるにせよ、かなりな出来具合のSF作品であることは間違いないだろう。

 

 思いついて確認してみると、シュレディンガーのチョコパフェ (ハヤカワ文庫JA)もこの作家なんだな。タイトルで買って、数ページ読んだまま放置していたけれど、再度トライしてみようか・・・。