本をよむ
休みに掃除をして、それからこれを読んでいた。
- 作者: 桜庭一樹
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/10/07
- メディア: 文庫
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確か昨年の直木賞はこの人だったのだけど、実は読んだことはなかった。何というか、ペンネームからしてライトノベル感が濃厚で、どうにも手を出す気にはなれなかったのだ。けれど図書館で適当に物色していて、思いついて借りてみた。
初めはいきなり中世ドイツの話から始まる。世界の描写はそれなりに巧みだ。ひっそりと暮らすマリーというひどく大人びた少女と謎の智恵を持つ老女という設定はそそられるし、その老女が魔女とされて拷問にかけられてみれば、実は青年であったという点は何か大島弓子の「七月七日に」を思わせる。特に、智恵はあっても無垢な少女を命がけで守る青年というのは、これまたある種の人の琴線に触れる部分だろう。また後半、そのマリーという少女が高貴な女性が隠し産んだ事が明らかになって、これは貴種流離憚になっていくのかな、と思わせる。
で、ところがいきなり日本人の少女が出てくるのだな。しかも、どうもタイムトリップ物っぽい。何故日本人の高校生が出てくるのか、その理由が何とも不明確。
更に近未来のシンガポールの話になって、ここでは下敷きになっているのが大塚英二の「少女民俗学」っぽい。ドイツの話とどうつながるのか?3Dのバーチャル世界と現実世界の重なりとかAIの話?と思うと、ただ日本人の少女が逃げていった先だけのよう。だから、どうしてシンガポールなの?
そして、そこまでして必至に逃げたはずの少女はあっさりと時空管理官に捕まって、元の場所に戻されておしまいって・・・。
何だったんだ。マリーはどこへ行くんだ。シンガポールの話とマリーがつながっていない。そして、システムって何さ!
と言うことで、一気に読めてそれなりにツボにはまるところはあるのだけど、なぜそうなるのか腑に落ちないところが多くて、不発弾です。
まあ、この作品は2005年の作品なので、2007年の作品ではもっと違っているのだろうし、ジャンルが違えばまた違うのだろう。人物や世界の描写は巧みなので、ある程度描き続けていくうちに、更に一皮二皮向けてもっと幅広く受ける作品を書くようになると思う。て、その結果が昨年の賞なのかな?
しかし、有川浩でもそう思ったけど、年代的にも嗜好的にも、この著者って私とよく似たものを読んできてる気が・・・・。