本を読む(本日2冊目)
あまりに暑いので、太陽光線の元に出る勇気もなく、ほとんど引き篭もり状態。なので、読みまくって、本日2冊目はこれ。
- 作者: ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア,Jr. Tiptree James,伊藤典夫,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1999/04
- メディア: 文庫
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久しぶりにティプトリーの新刊、輝くもの天より墜ち (ハヤカワ文庫 SF テ 3-6) (ハヤカワ文庫SF)が出て、ついでに他の作品も読みたくなった訳。と言っても、私が持っているのはたったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)と愛はさだめ、さだめは死 (ハヤカワ文庫SF)だけで、この際と思っていろいろ買ってみた。そのうちの一冊。
実のところ私は短編集というのはあまり好きではない。基本的には長編が好きだ。その世界にどっぷりとはまってしまう感覚が大好きで、だから時代や設定の異なるいろんな世界が混じる短編集は増不得手。それとティプトリーの作品は必ずしも読後感の良いものばかりではない。ほろ苦さを超えて、とてつもなく苦い物語が随分あるし、かなりSF的な何が真実かよく判らない、あるいはどこの、いつの世界の話なのか判然としない、そう言う点が魅力となっている作品もある。マニアウケはするだろうけど、万人に受ける作品ではないと思う。
で、短編集なものだから、ついついこの本も休み休み読んでなかなか読了に至らず、やっと読み終えたとところ。
その中で個人的に印象に残るのは「たおやかな狂える手に」だろうか。
醜く孤独で善良とも言い難いCPがなぜ自虐的なまでの生活に耐え、そして遂に船を奪い宇宙の彼方へ飛行したのか。その答えは、あまりに切なく、けれど優しい。
やっとたどり着いた放射能に満ちた同時に美しい世界で、生きられるたった15日間の中で、けれど彼女は自分を常に見守り呼び続けた存在と出会い、死んでいく。その中で交わされる異星人の問う「星ぼしとは何か?」という問い。死んでいく彼女の伝えたものを元に、新たな<星呼び>が生まれていく。その終わらない優しさに満ちた感じが好き。
つうか、基本的に他の作品はネビュラ賞の「ラセンウジバエ解決法」にしても「ビーバーの涙」にしても救いがないねえ。でもだからこそ視点を入れ替えて表された事象に、私たちは人類のしてきた事をしみじみと考えさせられるのかもしれない。有名な金子みすずの「大漁」という詩も表現は異なっても同じかも。
そして、そういう極めて後味の悪いブラックな物語と、それから哀しく優しい「たおやかな狂える手」や「星ぼしの荒野から」が同居するからこそ、それぞれが引き立てあっていいのかもしれない。
と言うことで次は「老いたる霊長類」にチャレンジ。