本を読む
これを借りた。
- 作者: 方波見大志
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2006/10
- メディア: 単行本
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またまたライトノベルなんだけど、意外に読めた。
自分の希望する時間を出来事を削除してしまえる機械を手に入れた小学生の物語。
この作品では、主人公が小学生というところが、ミソだな。SF的には、よほどの事でもない限り時間なんていじるもんじゃない、ってのが常識だと思うけど、子供はそんな常識をもたないし、単におもしろがる。これが中学生以上を主人公にすると、すぐにタイムパラドックスの問題に思い当たるだろうし、それにどのようにして過去を消し去るのか、そもそもその機械はどのようにしてつくられたのか、なんて事が気になる。けれど、小学生だから、その辺を全然気にせずに「おもしろくないタンニンの頭を殴る」なんていう目的で時間を削除したりするけれど、それが自然に感じられる。
そして、小学生は小学生なりの悩みや共感や好意を抱えている事がよく書けている。とは言ってもこれはお話なので、実際の小学生がもっとえげつないのでは、と思いはするが、そこはそれお話だから・・・。
そして、初めは本当に遊び感覚で機械をいじっていた主人公が、嫌な過去を消し去る事で、同時に嬉しかった事が消えてしまったり、あるいは傷つくことによって深く考え人間的に成長した友人が消えてしまうとすれば、過去を消すことをあえて望むのか?と、自問し始め、それを読む人は人間や子供の成長というものを信じられるのだ。
この作品は第1回のポプラ社小説大賞受賞作らしい。ポプラ社と言えば、児童文学の老舗だし、こういう作品が大賞になるというのは、よくわかるところだ。ハードカバーで、装丁もライトノベル的なんだけど、もう少しいじって小学校や中学校の図書館あたりでもおいてもらえるようにしても良いのではないか、と思った。SF風味の児童書という感じ。