hyla’s blog

はてなふっかーつ!

未来予想図

 テレビをつけると、国会答弁で教育基本法の変更についての議論が行われていた。


 まあ、ふ〜ん、ってなもんだ。つーか、今の教育が法律を変えて良くなるとは思えない。むしろ、悪くなるんじゃないか?更に、そんな事をしている暇に他にも考えなくてはならないことがいっぱいあるように思う。



 今も、「教育」とか「教員」とかの言葉を検索すると、付随する言葉は「指導力不足」とか「いじめ」とか、まあろくな言葉はない。飲酒運転などの教員の犯罪が増えたことは倫理観の低下による、とか教員の対応力のなさがいじめの蔓延を生んだ、とか一言で言って「教員の資質は低下している。これは困るので、何とか教員の資質を向上させたい。」そのためには「ダメ教員には辞めていただきたい!(現首相のお言葉!)」らしい。


 でも、首相ともあろうものが、その言葉はいっちゃあいけなかったんでは?と思うのだけど。
 
 マスコミ報道が全て正確だと仮定しても、人数から考えても、ごく一部の例外はあっても今の所大多数の教員は懸命に努力しているのではないだろうか。そして、教師の仕事は、結構モチベーション全てみたいな所があるのではないか。時間外手当とか残業手当がなくても、勤務時間外でも、休日出勤でも何でもOKだったのは、ひとえに生徒がいる、生徒の成績向上のためならまあしゃあないか、っていうのがあったはずである。でも、「ダメ教師には・・・」っていう、「教師」の部分でそもそも大多数の人は反応していて、いつの間にかそれは「教師はダメだから」みたいな論調になっている。これって、教育現場の教師のモチベーションには、結構致命的ではないだろうか。


 医療現場の崩壊の問題は、ここ最近大きくクローズアップされてきてる。特に、福島に続く奈良県の「妊婦たらい回し事件」(この言葉にもマスコミの悪意を感じるけど)では、産科医者の減少はますます加速したらしい。産科だけでなく小児科だって、ごく普通の内科外科だって同じだろう。でもって、地域医療、救急医療は崩壊して、急に病気になったら死を覚悟しないとダメなんだな、という事が身にしみるのだけど、その引き金を引いたのは一つの要因が、「医者のくせに・・・」「間違い許さず」ってなマスコミの報道であることは確かだろう。ごくわずかな例外があったとしても、高いモチベーションで支えられてきた医療の、肝心のモチベーションがなくなれば、そりゃ崩壊するしかないわな。


 で、そういう構図と教育現場の構図は、恐ろしく似通っているように思えてしょうがない。今は、医師の数がまず絶対的に不足しているという事が認知されてきているけれど、たしか20年くらい前は、「医師あまりの時代がくるから医師を増やす必要はない」、と言っていた。で、今までは教員採用試験は倍率が高くて困っているもので、教員に成りたい人はたくさんいた。だいたい、教員養成系の大学を卒業して、教員免許を持つ人の数は年間に必要な数の恐らく何倍もいたはずだ。つまり、今は教員(免許を持っている人)は余っている。


 けれど、「教員なんて・・・」がつづけば「やってらんない」と燃え尽きて教育現場を去る人が増えるのではないか。ついでに教員養成系の中でも教員免許を取得せずに卒業するいわゆる0免がバブルに頃に急増したはずだ。それでなくても、年齢構成的に退職者が増えることは判っているので、必要な教員の数は今後増加する。その純粋増だけでも、対応しきれなくなるだろう、との予測も出ている。

潮木 守一/桜美林大学大学院国際研究科教授 名古屋大学名誉教授
http://www.ushiogi.com/response.html



 ここに加えて、教員免許は10年ごとの更新制になるとかいう話だ。そうなると、現職でない人がお金と時間をつかって免許更新をするとは思えないので、免許を持つ人が減る。退職者や病休、産休を非常勤で確保しようにもそもそも人がいない。それに免許更新のための研修を充実するということは、現場の仕事はますます過酷になる。だからますます、燃え尽きる人が増える。
 それから、教員の資質の向上のために、教員は修士卒でなければ、なんて話もあるけれど、これが実現するとますます教員免許を取得できる人数は減少する。(これは、お金と時間の問題もからむ。)それから、今までは高校の免許は、教育実習は母校の高校ですれば専門学部(経済なら公民の先生とか、理学部なら、理科の先生とか)でもなれたけど、母校の教育実習も評価が甘くなるので、辞めさせようって話が出ているという。そうなると、またまた教員になれる人が減る。
 それから、教員の給与は事務職に比べて高いから下げなくてはいけない。給与が低くて、労働環境も条件も悪くて、その割に高学歴が必要で。何よりも、どんなマスコミでもブログでも掲示板でもどこでも、「教員はバカ」ならば、わざわざそんな職につこうという若者が増えるだろうか?「教師?他に職あるやん。」ってことになるだろうし、当然そうならない方がおかしい。

 

 そうした事を折り込んでゆけば、教員採用試験の倍率が1倍に成る日だって、いや人が足りないままに新学期を迎える学校だってあり得るかもしれない。


 
 「医師不足で医療が崩壊する」という話をもし20年前に聞いても、ほんまか?と思う人が多かったと思う。今、「教員のなり手がなくて、教育が成り立たない日がくるかも」と言っても、ばっかじゃない〜!と思うかもしれない。というか、私自身そう思いたい。考えすぎだと笑いたい。でも、日々耳にする情報を集めて描ける未来像は、どう考えても、どう避けようとしても「教育焼け野原」なんだけどな。


 格差社会の中で絶対的貧困でなくても、貧困に近い層が増えてきて、そうした敗者のルサンチマンのはけ口に医者とか教員とかを持ってくるのは良いけれど、その先ってばすごい物に成りそうでとっても恐ろしい。
 
 だって、産科、小児科を中心とした医療が崩壊して救急もダメな上に、学校教育も崩壊していくっていることは、子供や未来はいりませんからっていう事だろう。
 




  く、暗いわ・・・・・。