小さな幸せ
しばらく自席を離れて仕事をして、疲れて「はあ〜っ」とため息をつきながら戻ってきた。がらっと戸を開けて部屋に入ったとたんに、何かが違う。
何?この匂い?
そう、異臭がするよ。異臭。本来この部屋で嗅ぐべきではないような、まるでデンプンに火が通っていくような・・・。
これはもしや!と思ってストーブの上を見たら、やはりそこにはせんべいの空き缶が乗っていた。中には、小石がつまり、そして更にその内部には見事な鳴門金時!
まあっ!(^_^)こなに嬉しげなこと、どなたが・・・?
と、聞くと、やはりこの部屋で一番偉い主任の気配り。寒いもんねえ。
さあ、それからはみんなにこにこしながら、その時を楽しみに待ちながら仕事である。隣の席の女性も普段は夕方になるとクッキーとかつまんだりするのだが、
「今日は、我慢しよ!やっぱりお腹が空いた状態で食べなあ!」
と言うことである。
また、部屋には常に人の出入りがあるのだけど、皆入ってくると不審そうな顔をして、
「何か匂う。」
と言う。
「気のせいよ。」
「まるで、石焼き芋のような匂いが・・・。」
「それは全く気のせい。」
「ああっ。こんなとこで、焼き芋やあ〜。ああ、ええもんしよお!」
「何もない、何もない。やらんでえ〜。」
と、これまた阿呆な会話で、和む。
そして、再び別室で仕事をして、帰ってくると、こんな風にできあがったものが机にあったのよ。そう、出来たから、自分で好きなだけ切って食べな!と・・・。
ああっ!嬉しい、出来たのね!
そっと包丁で1㎝ほど切り取り口に入れると、ほっこり甘くてああ美味しい(^_^)!ついでに入れた、インスタントコーヒーの美味しいこと。
皆でつまんでいると、別室にいる管理職も入ってきた。
「あらっ、いい匂い。」
「そこにありますよ。」
「まあ、じゃあもらおかしら。」
ということで、みんなで少しずつ食べて、あっという間に無くなって、そしてみんな少しずつ幸せになった。
寒いけど、こんな日は、優しい気持ちになる・・・・。