hyla’s blog

はてなふっかーつ!

今そこにある絶滅

 
 久々にテレビを見た。番組が始まった時にうっかり見てしまって、後は目が離せなくなった。NHKスペシャル「絶滅から救えるかアムールヒョウ〜ロシア沿海州の森」だ。

 
 こういう番組は好きだけど、苦手だ。そこに映される動物たちは美しく興味深く見事で、その分未来のあまりの暗さに何ともいえない気分になる。


 シートン動物記なんかの動物文学も大好きだけど、嫌いだ。ロボ(「オオカミ王ロボ」)も王大(「偉大なる王」)も、みんな結局ヒトのせいで、いなくなってしまうのだ。月に照らされながら、鎖につながれ飢え死にしていくロボや、ヒトに追いつめられて、真っ逆さまに谷に身を躍らせる野生の馬や、ぼろぼろになって川を流れていくタルカ(「かわうそタルカの大冒険」)・・・・。動物文学の結末はいつも悲しい。悲しくない動物文学はない。ヒトとの関わりにおいて、悲しくない動物の結末はない。そして、そうした悲愴な結末は、今生きている動物に今もなお降りかかろうとしているのだと、知るんだなあ・・・・。



 画像に写るアムールヒョウは、美しい。けれど、厳しい現実の中での彼等の生態は悲しい。3mの金網を乗り越えてヒトの飼育する鹿を襲い、人家に飼われているイヌを襲う。そして、飢えのあまりに、食べ残しの鹿の毛まで食べる。一方では、雄の貯蔵した餌を食べるために自分のなわばりから危険な雄のなわばりに侵入する親子。そして、子育ての本能まで狂いだして来ているのか、と思える雌の行動・・・。



 そして何よりショックだったのは、彼等の血縁関係である。異常に小さな子供や変形した頭骨の話の後に、家系図が出てきた。そして、自然保護区に暮らす彼等の父親が「ウグラティー」と呼ばれた雄であると紹介された。



 ウグラティーって、知ってる!



 そう、随分前のNHKの番組でやはり同じように紹介されていたのだ。アムールヒョウの紹介であったことも忘れていたけれど、北の方の森林にすむ肉食獣
が絶滅の危機に瀕し、そして、紹介されたウグラティーと呼ばれた雄が、隔離された状況で自分の子供である雌との間で繁殖を初めてしまいそうだ、と。確かにそう放送されていた。ウグラティーというまるで猫が喉を鳴らしているようなそのいかにも猫科的な名前と、近親繁殖という禁忌を犯さざるを得ない状況が強烈な印象だった。それから彼等がどうなったのか、気にはなっていたのだ。ずっとウグラティーという、その名前だけは覚えていたのだ。



 ちなみにウグラティーを報道したその撮影は、1991年の事だったらしい。そしたら、今はもうウグラティーは死んでいるのだろう。そして、ウグラティーは娘との間に子をなし、その子が叔父とまた子をなし、その子供は再び父親とつがっているのだ。これほどに濃い近親交配が続けば、あっという間に影響が出て当たり前だ。



 今世界に残されているたった30頭のアムールヒョウは、そのままなら後10年で絶滅すると言われているという。1991年のあの後、状況は確実に悪くなっているという事だろう。


 
 別にたった1種のヒョウが絶滅したからといって、どうということもない、とも言える。また、多分世界の各地の動物園にはまだ多少飼育はされているのだろう。そして、それらの個体の間で人工繁殖をさせてもいいだろうし、死んだときに、卵や精子を取りだして保存しておけばまた復活させることだって出来るから、だから別にいいのだ、と言ってしまえばそれまでなのだけど・・・・。



 


 今、WWFとかが努力をはじめてはいるというけれ、多分10年では絶滅しなくても、20年後には野生個体は確実にいないような気がする。

 


  

 
 なんとも、やりきれない・・・・。


 アムールヒョウについて知りたければ、こちら

 

アムールヒョウが絶滅する日

アムールヒョウが絶滅する日