秋は読書で
昼過ぎから、ずっと本を読んでいる。本屋で本を選んで(当然その間立ち読み)、若干買って、ついでに久方ぶりに図書館に行って制限一杯の5冊を借りて、傍らに冷たいアクエリアスを準備して読書開始。
で、とりあえず現在読み終えた中で面白かったのはこれかな。
- 作者: 菅浩江
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/01/01
- メディア: 文庫
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管浩江の作品は、永遠の森 博物館惑星 (ハヤカワ文庫JA)、メルサスの少年―「螺旋の街」の物語 (徳間デュアル文庫)に続いて3冊目。「メルサスの少年」は、悪くはないけど、やはり子供向けファンタジーだった。で「永遠の森」は、同じく悪くは無いけど、妻であるミワコの方が遙かに才能あふれる学芸員であった、と知ったときの主人公の気持ちや、美和子自身の気持ちのかき込みに少々不満が残った。でもまあ、短編集の集まりが大きな物語作り上げる感じはよかった。
で、本作は、全体に結構いい感じ。
特に私が気に入ったのは、「KAIGOの夜」だろうか。
人間の死滅した未来の社会で、<中枢>を初めとするロボットが、人間を懐かしみ、人間を模倣し、やがてはKAIGOロボット(介護される人間を模倣したロボット)までも作り出してしまう悲しさ。機械化した未来社会において、人間が絶滅した後も機械が人間を待ち続ける、というモチーフそのものは別に珍しい物ではない。漫画でもSF作品でも、奉仕するものを失ったロボットの孤独と喪失感をテーマにしたものは、ちょっと考えるだけでもいくつか思い浮かぶ。けれど、それを「KAIGOロボット」という物を使ってあぶり出した所は結構新鮮。
「介護」は恐らく、人類史上初めての超高齢化社会を迎えつつある日本にとっても深刻で、まさに現代的な問題である。介護することは、相手に奉仕して時間と体力と気力とお金と、自分の全てを奪われることだけど、けれど同時に「必要とされる喜び」を得ることも不可能ではない。(全くたやすくはないけれど)
でも、「誰にも必要とされない孤独感」と、全てを奪われても「自分の全てを必要とされる」ことと、どちらかしか選べない、と言われたら人はどちらを選ぶだろうか。私はどちらを選ぶだろう。(とは言っても、特に高齢者介護は死ぬまでという時間制限がついているし、おまけに介護に集中して自分の生計が成り立たなくなっちゃうと、その時点で破綻するんだけどね。)
と、まあ、いろいろと複雑な感情を励起させるあたり、上手いと思う。この作品集の中では、これが一番好きですな。
他の作品、例えば「ホールド・ミー・タイト」も「箱の中の猫」も、基本骨格はどっかでよんだよな、と思う物が多いけれど、それなりに著者らしさは出ていると思う。
ということで、ハードカバーで買うにはちょっとしんどいし、場をとるけれど、文庫なら持っていてもいいんではないでしょうか。
(にしても、「ごにんしまい」と入れて変換すると、まず初めに「誤認しまい=香川弁で「間違えなさい(命令形)の意」が出る私のパソコンってば何なんだ!)