満濃公園へ行く
仕事で国立満濃公園へ行っていた。できてから10年にはなるというが、これまで一度も行ったことがない。何となれば、高いし遠いし、おまけに里山なんぞわざわざ満濃まで行かなくてもフツーにそこらにあるやん、と思うと行く気にはなかなかならないものである。
で、やや偏見気味に行った満濃公園であるが、まあいろいろと勉強になったと思う。午前は博物館の先生のお話で、午後はボランティアのインタープリターによるガイドで園内を見るという段取りである。
で、聞き慣れないインタープリターっていったい何なのさ?というと、まあ自然観察指導員の一種である。が、自然観察指導員とかは基本的に生物についての知識をそれなりに、いやかなり必要とされると思うのだけどインタープリターにで大事なのは「自然に詳しいこと」ではなくて「人が好きであること」なのだそうだ。そして、「五感を通して自然を感じ、その背後にあるも様々なものを感じ、考えること」が活動の目標だという。
まずはお手並み拝見かな?と思いつつついて歩いた。
歩き始める前に、まず上記のようなインタープリターという活動の紹介。それからコナラの高木の下に行き、
「ここと集合場所では何か違いがありませんか?」とふる。
「涼しくなった。」と答えさせておいて、
「その理由は、コナラが陰をつくってるし光合成しているからだ。」という。
うん、温度の違いという要素を肌で感じ、その背後にあるものを考えさせるという段取りだね。
が、ちょおおっっと待て。「温度が低い=光合成してるから」っておかしかないか?それよりは「蒸散しているから」の方が適切だろう。かつ「光合成というのは水と光から養分をつくること」って、「光エネルギーを用いて二酸化炭素と水からブドウ糖(デンプン)を合成すること」ではないかい?
そう、知識がやや、いや、かなりあやふやである。
で、更に、しゃべりすぎるのだ。ネタとして仕込んで来たことをしゃべりたいというのはよくわかる。「外来種が増えている」「里山の生物たる両棲類は減少の一途をたどっている」「メダカも減少しているけど、ここでは本物が見れますよ」「ジュンサイだってあるんだぞ。」
あれもこれも大事だし、言いたい!
が、こうなるとかなりインタープリターがしゃべっている時間が長い。聞く側はこう、拝聴するって感じになるのだ。でも、そうなるとそこでカイツブリが泳いでいることも、カメがひなたぼっこしていることも、シオカラトンボが産卵していることもみんな見ない。ましてや、かすかな鳥の声なんぞムシ、ムシ!
五感を使って自然を感じる?
なんか、本来の趣旨からはずれてやせんか?とついつい思ってしまうのだ。
平日にわざわざ無料のボランティアとして来てくださるということは、すごいと思う。そしてまた、最新のやり方の勉強をしているのだと思う。
けど一方で、思ってしまう。生物を五感を使って感じさせることが大切なら、生物を探すことからスタートするべきでは?
一心に目をこらし探しあてた昆虫だったり、植物だったり、そう言うものを捕まえて、あるいは採って、で聞いてみる。
「これ、何?」
それに対して即座に
「ああ、これはタイコウチ。」
って感じにどんどん答えが返ってくると、
「すげーぜ、このおっちゃん!」
って思うし、そうなるともっとどんどん聞きたい。更に
「お、えーもん見つけたでないでだ。すごいやん。」
とか言ってもらえると、子供はもちろん大人だって鼻高々で、もっともっと頑張って一生懸命に生物を探そうとするだろう。それこそ五感をフルに使って。
けど、言うのは簡単だけど、それはなかなか難しいことだ。地域を限定してさえも、そこにいる生物の名前ならあらかた答えられるなんて人がどれだけいるだろう。少なくとも私には無理だ。そんな人は、いないことはないけど、ホントに知っている人は、大抵バカみたいに忙しい生活をしているから、ホントに暇などない。うーん、難しいね。
こういうやり方は、学校教育の最近のやり方にも似ていると思う。「知識を詰め込むより感じることを重視」という考え方って、現在の教育方針とすごく似通っている。だから同じ問題点を抱えていると思う。そう、「知識がないから、何もおきなくなる」という問題だ。
語彙が豊富でなければ、豊かな表現はできないし、計算ができなきゃ理科もへったくれもない。
コナラにアベマキにリョウブにアセビ。これらの識別ができなければ、どれだけたくさんの生物がそこにいるか、なんてわかるはずもない。コナラとアベマキの違いをしることで、多様性ということを実感できる。
そこにいるものがいったい何か?種を識別しようとする態度って、ぜったい必要だと私は思う。「名前を知ることだけが大事ではない」のは確かだが、「名前を知ることは極めて大切なこと」だろう。
ということで、まあいろいろと勉強になり、考えさせていただきました。
ワタクシも文句ばっかり垂れてないで、もちっと生物の識別ができるよう、努力せなあきませんですね。
うん、がんばろう!