hyla’s blog

はてなふっかーつ!

夜の散歩

夜の景色


 夜11時を過ぎてイヌと散歩に出かけた。
 朝少し降ったっきりだった雨が、夕方また少しだけ降って、空気は水気をたっぷりと含んでいる。路面は昼間に暖まっているし、こうなると霧がでる。瀬戸内名物「春霧」。濃霧注意報もでているし、きっと明日の朝は停船勧告が出るだろう。けど、こういう霧の日は、ものすごく好きだったりする。

 
 イヌを連れて、川までいく。オレンジの街灯の光に、ぼんやりと煙った景色が照らされている。ずっと向こうの街灯の灯りも、川の水も、家の灯火もみんな霧の中。歩くと霧の動くのがわかる。この細かな霧は、芽生えだしたアシの葉先に、咲き出したノイバラの花弁にまとわりついて、集まって、きっと露になるのだ。そして、集まって耐えきれなくなって、地面に滴り落ちていく・・・。


 木々と共に、自分自身の体も、しっとりと濡れたように潤っていく気がする。そして、一人随分と幸福な気分になるのだ。こんな日はいつも思う。きっと、前世なんてものがあったとしたら、私はきっとどこかの谷間に住んでいた蛙だったに違いない。

  
 田植えの終わった水田では、カエルが鳴いている。「ゲエッゲエッゲエ」と、無数に呼び交わすアマガエル。そして、「ぐええええっ ぐええええっ」と控えめに鳴いているのはきっとヌマガエルだ。それから、川の中から目覚めたばかりのウシガエルの声が聞こえる。「ぼおおおっ ぼおおおおおっ」と鳴く声に、別の声が重なって、互いに競いあって鳴き始めた。けど、その音は少しだけずれていて、ちょっと不協和音。2.3度してから鳴きやんで、今度鳴き始めた時には音はきれいに合っていた。低いソの音。これで、トノサマガエルの声が混じれば言うことはないのだけど、さすがにもう今ではそれは無理だ。

 
 ゆっくりゆっくり、誰もいない夜道を犬と散歩する。
 
 
 夜の12時を過ぎて、でも蛙たちの声は一向に絶えることはない。
 蛙が鳴くって事は、その土地が、かよわい蛙達でさえも何の問題なく生きていけるくらいに、穏やかで幸せな場所だということだと思う。だから蛙の声は、言ってみれば「歓喜の歌」なのだ。

 
 霧は、少しずつ固まって、雨粒になり出した。
 明日の朝も、きっと霧だ。
 
 
 そして、こんな日は、それだけで幸せな気分になる。