hyla’s blog

はてなふっかーつ!

古い本

動物図鑑


 私の勤務先には、非常に古い本が残っている。特に書庫はもちろん、普通に閲覧可である場所に、「おおっ!」と叫びたくなるような、非常に古い、つまりは貴重な本があったりする。
 まあ、古い本に対する愛着、評価というのは人それぞれだから、「古い=素晴らしい」とは限らない。が、時たま、そういう古い本を開いて、その中の文章を読むと、その当時の人の、こう、意気盛んな姿というか、熱情とでも言うべきものが感じられて面白い。
 
 先日は、「動物図鑑」を借りた。北隆館という出版社の動物図鑑は今も出版されているが、緻密な線画によって書かれた絵が美しく、動物界全体をまとめた図鑑であるという点でもなかなか良いと思う。(現在は、既知の種数が増えすぎたため、昆虫図鑑とか、鳥類図鑑といった、分類群の単位の図鑑でないと、本ができない。)借りたのは、その北隆館の「動物図鑑」である。北隆館の動物図鑑の歴史は長い。現在に至るまで何度も改版されている。が、この本は最も最初に作られた「動物図鑑」で、何と大正15年出版。マジ?って感じだが、これが書架にあるのだ。それも普通の書架に!誰でも触れるところに!

 本を開くと「そへことば」というのがある。以下のようなものである。

 「・・・・・・本当の研究に取り掛かる前に、まず材料とする種類の学名を確にして置かねばならぬが、之が日本では中々容易ではない。稀な種類は暫く措くとして、普通のものだけは誰でも自分でその学名が探し出せるやうな書物が出来て居たら、さぞ便利なことであろうと我々が常に思うていた所であるが、今日まで、その様な・・・(中略)・・自然物から直接に得た知識と教訓とを楽しみ味ふものが一人でも多くなるようにと切に希望して止まぬ次第である。」

これを書いたのは 丘 浅次郎 という人物。
 
 日本初の「動物図鑑」作られた北隆館の「動物図鑑」の出版に対し、非常に願いを込めているよね。
 「・・・・切に希望して止まぬ・・。」
 という願いは、現在果たされたといえるのだろうか。丘浅次郎が、現在の日本の生物学を見たら、どう思うのだろうか。いろいろと想像してしまう。この文章、なかなか良い文章だと思う。
古い本には、浪漫があるよなあ〜。と感慨にふけることしばし。
 

 はい、物好きです。