朝の海岸で知る
朝5時前に起きて、海岸へ行った。夜の海岸へ行くのは、ちょっと怖い。ならば、朝早くの海岸というのはどうだろう。
まだ薄暗い時間だから、道を歩く人もいない。スズメもまだ動いていなくて、わずかに空をカラスが飛ぶのみ。そして、海岸へ着いた頃、にわかに空が明るくなった。曇り空で太陽は見えなかったけれど、代わりに空が桃色に染まった瞬間を見た。空も海も、海岸線も、何もかもがピンク色を帯びて、そんな光景を一人で見ていることがもったいない。
朝焼けを堪能した後は、海岸へ降りて生きものを眺める。けれど、ちょっと時間が遅かったらしく、ハマダンゴムシやトビムシも砂の中に潜ってしまって、夜行性の生きものはほとんどいなかった。
それでも誰もいない涼しい海岸は気持ちよくて、何となく楽しい気分のままに奥まで行って引き返した時、一気に冷や水を浴びせかけられたような気がした。こんなものを見たからだ。
海岸の奥近くまで、深い轍がくっきりと刻まれている。そのうち1台は、深い刻み目があるから、砂地でも走れるような車だろう。そして、普段皆が車を置くところから、山沿いに生えた海岸植物の中を走って波打ち際に出ているから、ハマエンドウやハマヒルガオの群落がひどく傷んでいる。そして、そんな轍に近づくと、ポロリとハマダンゴムシが丸まって転げた。
いったい誰が何のために、こんなに深く車を入れたのだろう。ただキャンプをしに来る人がここまで車を入れるのは、考えにくい。とすると、先日の雨の晩に見たように、やはりこれは密漁とかそういうものの跡だろうか。重い車が砂地に入れば、海岸植生はあっという間に破壊されるし、砂の中の小さな生きものにも致命的だ。ここに今たくさんいるハマダンゴムシだって、一気にいなくなってしまうだろう。
この海岸は、香川県でも保全地区になっているのに…。
ここに車を入れた人がどういう目的であったにしろ、この海岸は今では香川県でも屈指の自然海岸であることは間違いない。しかも、砂浜ではなく荒い砂利の海岸だから、砂利の中にしか住めないような生きものもたくさんいる。たぶん、ここには未記載種もたくさんいる。何とか、車の進入を防ぐ方策はないだろうか?何かできないだろうか?今この環境を失うことは、生物多様性的に、大きな損失になるはずだ。
知っていて、放置するのは、失うものが多すぎる。
私に何ができるだろう。
何をすればよいのだろう。